遠藤宏治(貝印社長)×伊勢谷友介対談「100年続くモノづくりとCSR」PR

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貝印遠藤宏治社長(左)と 俳優でリバースプロジェクト代表を務める伊勢谷友介氏

明治41年創業、100年の伝統を持つ貝印の根底には、刃物の都・岐阜県関市で育まれた「野鍛冶の精神」が流れている。いまや貝印グループの製品・サービスはカミソリをはじめ、家庭・美粧・医療用品など1万点にもおよぶ。株式はいまだ非公開で、社員との絆、地域とのつながりを大切にしてきた。伊勢谷友介氏が本社(関市)の遠藤宏治社長を訪ねた。(文・谷崎テトラ)

伊勢谷:利益を上げるために、国外で製造拠点を移動しているメーカーが多い中、貝印はいまも関に拠点を置いているのですね。

遠藤:今から800年前、刃物の祖によって開かれた関の町は、刀鍛冶の名匠・関孫六を生み、「刃物の町」と発展してきました。独ゾーリンゲン、英シェフィールドと並ぶ、世界の三大刃物産地です。

刃物をつくる上で3つの重要な条件があります。1つは水が豊富なこと。関には岐阜の大日ヶ岳から長良川が流れています。2つめは山。焼き入れをするために山炭が必要なのです。3つめは赤土。刃をつくるときに泥を塗るためです。

このあたりは粘土質で土が良い。近代化した今でも、水、山、土など自然が重要です。

刀は鋳物の鍔(つば)があり、鞘は白木、束は糸を巻きます。それぞれの職人による分業なのですが、今でもそのインフラが残っています。関は昔、刃物産業が7割近くを占めていたのですが、いまは2割弱に減ってしまいました。だからこそ、関の伝統を守らなければならないと思っています。

■100年企業としての価値観、利益は「エクスクリータ」

刃物はすべて国内で製造し、最終確認は手作業で行う。遠藤社長は、社員を「家族」だと語る

伊勢谷:70億人いる人類は、地球のバランスを崩し始めています。「エコロジカル・フットプリント」で考えると、地球が2個半必要です。宇宙から見たら人間は地球のガン細胞のように増殖して、他の生物をつぶそうとしているように見えるかもしれない。

人類はそうなる前にバランスを取る「種」になる必要があります。100年企業としてCSRについてどのような考えをお持ちですか。

 

遠藤:「バランス」という考え方は、「『相対するもの』をバランスさせる」ということになります。そうすると、どちらが重い、軽いということになってしまいます。

企業はどれだけ売り上げを伸ばしたかが最終目標になりがちです。そうではなく、どれだけ企業が社会の皆様に幸せを感じていただいたか、社員がどれだけ幸せに学び続け働けたか、その会社の製品・サービスを使ってどれだけ多くの人を満足させられたかが価値だと思うのです。

私は、CSRとは「いかに誠実に生きるか」だと考えています。人間が誠実に生きることも大切ですが、会社が誠実に生きる。誠実であればそれがCSRにつながるのではないでしょうか。

私にとって大切な価値観は「皆が幸せで健康で笑って暮らせること」です。

現代の多くの企業は、「株主第一」と考えています。しかし貝印の場合、株式は非公開で筆頭株主は私ですから、ある意味利益は関係ありません。極端なことを言えば、キャッシュ・フローがうまく回れば会社は倒産しませんから、それで十分なのです。

ある先生がおっしゃっていたのですが、「売上」や「利益」は「エクスクリータ(排泄物)」のようなもの、「売上」「利益」が事業の「排泄物」だとすれば、そんなにこだわってどうするのだ、ということなのです。

■「底なし釣瓶で水をくむ」、禅に学ぶ経営の心

伊勢谷:仰る通り、大飯を食らい、たくさん排泄したら、それをきちんと肥やしにして、社会に還元しなければいけません。遠藤社長のそうした考え方はどこから来ているのでしょうか。

遠藤:祖父の時代から禅の考え方が受け継がれています。

例えば、「底なし釣瓶(つるべ)で水を汲む」という話があります。きれいな娘をもつ長者が、跡取り息子を婿にとるときに、候補の男たちにある課題を与える。「明日の朝までに井戸からこの釣瓶で水を組み、四斗樽に水をいっぱいにしなさい」と。ところがその釣瓶には底がついてない。お金目当ての男たちはみな諦めてしまった。

しかし、ある男性はそれでも一心不乱にその釣瓶で水を汲もうとしました。夜を徹して井戸の水を汲み、釣瓶についたしずくが少しずつ溜まり、四斗樽を一杯にしたのです。

そういう話を幼い頃から祖父や父から聴かされていました。一心に「底なし釣瓶で水を汲む」気持ち。その「一心」が「誠実」につながると思うのです。

当社も厳しい時期があったのですが、こうしたことが毎日の経営の中に生きています。

プロフィール:

遠藤宏治(えんどうこうじ)
貝印/カイインダストリーズ社長。55年、岐阜県関市生まれ。89年9月、33歳で貝印グループの社長に就任。ポケットナイフのメーカーとして誕生した貝印は、08年に創業100周年を迎えた。安全カミソリ、家庭用包丁などで国内トップシェアを誇る。

伊勢谷友介(いせやゆうすけ)
俳優、映画監督、リバースプロジェクト代表。貝印がプロデュースするウェブサイト「KAI TOUCH EARTH」内のコンテンツ「EARTH RADIO」のパーソナリティを務める。リバースプロジェクトは、地球環境を見つめ直し、未来のくらしを新たなビジネスモデルとともに創造することを目指す。

KAI Touch Earth

KAI presents「EARTH RADIO」(毎週金曜日更新)

2012年12月18日(火)10:00

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