「欧州企業と人権(2)人権方針と研修」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(26)

日本では、「欧州企業の人権に対する理解は進んでいる」と思われているかもしれないが、多くの欧州企業では、まだまだ人権についての認識は不十分のようだ。人権に関する認識を高める必要性を感じ、企業に対して研修の徹底を促しているのが実情だ。

GBIのレプチ氏によると、人権の研修プログラムは、以下を考慮してデザインすることが必要だという。

1)対象となる人を良く知っていること
2)人権を尊重しようとしている人の意欲を減退させるような人権の課題について理解すること(人々は一般に人権侵害をしたいとは思っていない)
3)それらの人権課題を解決する為の解決策を見つける手助けをするものであること

人権コンサルティング会社トエンティ・フィフティのディレクターのルーク・ワイルド氏は、「単に人権に関する意識向上を促すことだけで、多くの企業が様々なことを達成することができる」と話す。難しく考えずにできる範囲のことから始めていくことの重要性を伝えている。

■ アルセロールミッタル、全従業員に人権研修

人権に関する研修については、先進企業は取り組みを徹底している。

ザ・コカコーラ・カンパニー(本社:アメリカ)では、2011年に人権声明と職場の権利に関する方針の研修会(45分)を開催、約8600人が参加したという。

また、アルセロールミッタルは2011年、全従業員14万7千人が人権研修を受講。7言語による人権のオンライン研修、また、人権の研修を担当することができる指導員の育成にも力を入れ、指導員向けのワークショップも開催している。

企業の中で人権というものが何を表しているのか、そして、企業がどのように人権に影響を与えているのか、誰と関係があるのか、管理者がするべきこと、できていないことは何か――などを一つひとつ明確にして行くと良い。

欧米の先進企業の取り組みを参考に、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った形で、日本企業にはどのように人権課題に取り組んでいくのが望ましいのか検討を始めてほしい。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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