それでも、友人らを中心に渡辺さんを支える介護チームが立ち上がり、最後まで自分らしく生きようとする渡辺さんを温かく支える光景には救われる。
市民運動とのかかわりも深かった渡辺さんは自身の思いや考えを個人誌やブログなどを通じて発し続け、3・11後は脱原発を訴えに経産省前へも足を運んだ。渡辺さんの周りにはがん患者仲間や地域の友人など、様々な人が集った。
映像制作グループ・ビデオプレスの松原明氏と佐々木有美さんが制作。「渡辺さんは合理的に考える人。自分の死を客観的に見ることができる稀有な人だった」と松原氏。佐々木さんも「一筋縄では行かない死というものに向き合うことは、転じて『どう生きるか』を問うことに通じる。メメント・モリ(死を想え)という言葉の意味を実感した」と制作過程を振り返る。
病や死を前にして、人は何を価値とするのか。そこに正解はないが、渡辺さんの最期は記者には「辛いが、幸せな死に方」と映った。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
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