富士山保全「『美しい自然を守ろう』だけでは足りない」

■「文化的価値の再発信を」

1982年から富士山麓で環境教育などに取り組むホールアース自然学校(静岡県富士宮市)の田中啓介氏は、今回のイコモスの勧告を「富士山の自然に加え、文化的価値が世界的に認められたことは喜ばしい」としつつ、「今後は訪れる人に、富士山が持つ文化的な側面を分かりやすく伝えていけるかが課題」と話す。

富士山本宮浅間大社 (Wikimedia Commons.)

例えば、富士山そのものを信仰の対象とする「富士信仰」の歴史は古く、富士山の神体である浅間大神を祀る浅間(せんげん)神社は全国に点在。富士山本宮浅間大社(富士宮市)はその総本山にあたる。「富士山は信仰を通して日本人の自然に対する畏敬の念を感じられる山だったが、観光地化でそうした意識が弱くなってきたのでは」と田中氏は言う。

その上で同氏は「畏(おそ)れ敬う気持ちがあれば、ゴミで汚すようなこともない。美しい自然を守ろうと言うだけでは、自分事として富士山を捉えにくい。日本人の自然観を象徴する富士山で、『自分の価値観にもどこかでつながっている』という意識の変化が起こることを期待したい」と述べる。

同校では今後、富士山の文化的価値を伝えることを目的に、ツアーガイドの発信力を高めたいとしている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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