「欧州企業と人権(3)人権デュー・ディリジェンス」――下田屋毅の欧州CSR最前線(27)

IHRBによると、統合を達成するための管理手法の例としては、以下があるという。

1)雇用、採用、活動評価のような人的資源プロセスにおける人権コミットメントに関係する基準を含む
2)指導原則と行動基準に関する従業員研修を実施する。それらは、人権に関するジレンマを共有すること、そして、ビジネスの意思決定の影響を理解することを含む
3)非財務評価とボーナスを含む長期的なインセンティブの開発
4)人権方針から外れた行動に対する強い阻害要因(懲戒処分を課すなど)の導入。
5)人権ジレンマへの対処とパフォーマンスの改善についての許容量の整備
6)支援方針、手順、モニタリング、その他監視メカニズムを含む、人権監視システムの作成
7)ビジネスパートナーとの契約に人権原則を含み、それらを訓練、監視する。

企業が人権研修を実施し、人権に関する意識を高めることは重要であるが、研修を実施するだけでは完全な統合を実現することできない。IHRBの調査では、この統合プロセスでは、長期的なインセンティブと人権侵害を防ぐ阻害要因が必要不可欠とされている。上記を参考に人権デュー・ディリジェンスにおける効果的な「人権影響評価」、「適切な対処のための行動」について検討されたい。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

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shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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