シリア難民に銀座のIT企業が業務委託

IT政策コンサルタント・山中翔大郎

■ 「より多くの人を支援できる方法を」

筆者は、5月の連休に打ち合わせのためにイスタンブールを訪れた。シリア難民のIT技術者グループとの会合では、市内中心部のスターバックスが30人弱のシリア人で溢れかえった。

テーブルごとにプロジェクトの概要を説明し、一人ひとりの状況と希望を聞き取る。次第にメンバーの声が熱を帯びてくる。日本人一人が囲まれた状況で、ふと映画「アルゴ」のシーンが頭をよぎる。

「もし僕が不誠実な態度を取って、例えば革命時の民衆のように、シリア人メンバー全員が怒ってしまうと、僕なんか簡単に消えて無くなってしまうのだろうな」

眼に力を込め、慎重に言葉を選び、丁寧に返答する。多かったのは、「より多くのメンバーが支援される方法を考えてほしい」という意見だ。重い宿題を抱えながら、打ち合わせは翌日に持ち越された。

一晩中考え、ひとまずプランとしてまとめたのはスタディツアーである。フィリピンやバングラデシュなどのNGOや孤児院で、ボランティアの経験も得るという形態の旅行である。

幸い彼らにとって新しいアイデアだったようで、翌日の打ち合わせでは滞在先、訪問先等に対する意見が次々と出された。

元来イスタンブールは観光でも充分楽しめるので、難民支援との両立は、学生やビジネスマンにとって充実した体験となるに違いない。その結果、シリア難民の現状を世界に伝え、生活支援にも貢献できるので、実現の意義は大きい。

ITが世界中をつなぐ現在、東京からできることは実は少なくない。オンラインの雇用支援を軸に、引き続き多方面からシリアの人々の力になるようにプロジェクトを進める。(IT政策コンサルタント・山中翔大郎)

筆者プロフィール:
2011年、一橋大学大学院社会学研究科修了。米系金融機関勤務を経て、IT政策コンサルタントとしてコンサルティング会社に勤務。学生時代にはマニラの女性移民支援NGO、国連広報センターでインターンシップとして勤務。本業の傍ら2013年2月、最先端のICTビジネス・技術と緊急・人道支援を結び付けたいと思いWorldLinkを設立し、代表を務める。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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