日本も存在感、CSR報告書の新ガイドライン「G4」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(29)

この委員会を組織した目的として、「持続可能な社会に向けて、企業の非財務情報開示に関する議論を深め、国内での普及啓発国際的基準へのエンゲージメントを図ること」としている。

委員会は、今回のGRI国際会議2013に向けて日本代表団を結成、筆者も代表団の一員として参加した。日本代表団を結成した背景として、今までのGRI国際会議では、日本からの参加が非常に少なく、日本としての存在感を示すことができずにいた。

そこで、今回国際的に注目を集めるG4が発表されるGRI国際会議2013に向けて結成し、多くの参加を促し、日本としての存在感を示すとともに、日本独自の公開セッションを設けて、日本のCSR活動について国際会議で伝えたいという関係者の思いがあった。

今回の日本代表団は24人で構成され、最終日の24日には、日本独自の公開セッションを開催、日本企業のCSR/サステナビリティの取り組み、特に東日本大震災後のCSRにかかわる復興支援について報告がなされた。

さて、今回発表されたG4とはどのようなものなのか少し触れてみたい。G4の大きな目的は、次の通りだ。

1)初心者、経験のあるレポート作成者にとってもユーザーフレンドリーにする
2)定義を明瞭にし、技術的な品質を改善する
3)他の報告書のフレームワークと連携する
4)国際統合報告委員会(IIRC)と連携し、サステナビリティ報告と統合報告を関連付ける方法のガイダンスを提供する
5)財務情報開示の国際的プロトコルであるXBRLの改良サポートをする

また、今回G4に関して押さえておくべき重要なポイントとしては以下が挙げられる。

1)重要性(マテリアリティ)をより明確化すること
G4では、企業に、何が重要か、どこの地域で重要かを報告することが求められる。重要性(マテリアリティ)はG3でも取り上げられており、新しいものではないが、G4のフレームワークでは、より明確に影響、リスク、機会といった重要性(マテリアリティ)を中心に報告することが必要となる。

2)アプリケーションレベルチェックの除外
サステナビリティ報告書のレベルをチェックするアプリケーションレベルチェック(ABC)とその外部保証を知らせる「+プラス」がフレームワークから除外された。 G4では、GRIのガイドライン に「準拠」した「中核」と「包括」報告書の2つの選択肢がある。「中核」と「包括」報告書の間の最も大きな違いは、ガバナンスと戦略の開示数である。

3)GRIのガイダンスを2つのパートに集約
G4は、ガイダンスを2つのパート(報告原則と標準開示、実行マニュアル)に集約。パート1は、報告の原則に焦点を当てて、内容、計画、ガイドラインを使用した組織の概要の情報を提供するように設計されている。パート2は、重要なトピックについてのガイダンスを含む実行マニュアル。パート2が何を報告するのかを伝えながら、パート1は、どのように報告するかを説明している。

4)マネジメント・アプローチの開示(DMA)の詳細を提供
DMAには2つのタイプ、「包括的DMA」と「特定側面のDMA」が存在する。「包括的DMA」は、企業に組織の重要項目のための3つの基本的な項目の開示を求め、「特定の側面のDMA」は、DMAに何を含めることを考慮すべきかについて、より詳細なガイダンスを提供している。

5)ガバナンス、報酬などの開示
「包括」報告書に要求されているガバナンス開示は広く、深い。 G4では、環境、社会、経済的影響の監視、報酬、研修、取締役会の多様性、ミッション、ビジョン、価値の開発における役割、に関しての手順の記述を求めている。また、新しいカテゴリーとして「倫理と誠実さ」を一般標準開示に、「サプライチェーン」、「腐敗防止」「温室効果ガス排出量(スコープ123)」を特定標準開示に追加した。

また、G4では、報告書の内容を確定するための4つのステップを以下のとおり設定して伝えている。

1)識別:バウンダリー(報告範囲)と重要性の特定
2)優先順位:報告書の内容の優先順位付け
3)検証:重要性とステークホルダーへの説明に関しての検証
4)レビュー:報告書発行後、次回報告書作成へ向けての内容の再検討

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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