ソフト・ローとは、守らないと罰せられるハード・ロー(憲法や法律、条令など)の対義語で、順守しなくても罰せられることはないものの、社会からの批判を浴びることになるルールを指します。
ソフト・ローは具体的にはモラルや宗教上の規範、国民感情、消費者意識があり、アクションとしては批判や抗議の発露、不買運動などがあります。
ソフト・ローの存在は、実は資本主義社会が始まってすぐに知られることになりました。1790年代に、東インド会社がカリブ諸国の奴隷を使用して生産した砂糖をイギリスに輸入していたところ、消費者の不買運動が高まったのです。
その結果、東インド会社はカリブ諸国からの砂糖の輸入を停止したというのが、おそらくはソフト・ローの適用第一号だとされます。
ひるがえって今回の統一球の問題を検証すると、NPBや加藤良三コミッショナーは何らかの法律に違反したわけではありません。
それなのに、世間からこれだけ強い風当たりがあるのは、ソフト・ローに触れたからなのです。それは「コンプライアンス違反」と換言することができます。
本誌で何度も指摘してきたように、「コンプライアンス=法令順守」は誤訳であり、真のコンプライアンスとは、「ステークホルダーとの対話」なのです。
その意味で、今回のプロ野球統一球のケースでは、プロ野球機構側と、ステークホルダーとしての「選手」との対話や意思疎通が欠けていたことは間違いありません。
そのコンプライアンス違反が、現代日本のソフトローに触れ、今の騒動に至ったというのが今回の経緯です。