CSR: 統合報告とは年次報告書とCSRレポートの合冊ではない

彼は<IR>を通じて、投資家に企業の社会的価値(value)の概念を伝えることで、彼らの行動変化を促すきっかけにしたいと言っています。

つまり、まず報告をする相手、読者層をはっきりさせることです。CSRレポートの対象読者は従業員、NPOから市民というマルチステークホルダーです。<IR>は投資家がターゲットです。

CSRレポートのガイドラインは様々な社会課題に関心のある読者に対し、CSR担当者が何を書けばいいのかを理解するために使う参考書です。

一方の<IR>は、投資家に対して、財務の部分だけではなく、企業活動が社会的価値を生んでいることを彼らの興味を引き付ける情報-つまり投資価値に値するか-にして発信することを試みています。

企業活動は営利の枠を超え、社会的な側面を持ちます。それはリスク要因だけではく、積極的な投資をする評価となることでもあります。

例えばスーパーで売られている、あるいはレストランで使われている一農産物で考えてみましょう。農薬の不適切な管理が地域住民の健康被害を及ぼしているとします。これはリスク要因です。とある企業が農産物調達だけでなく、生産現場を監督する仕組みを作ったとします。

これは、その仕組みを運営するコストを加えると単純な企業の収益率は下がるように見えるかもしれません。別の視点では環境負荷が少ないという価値を生み出し、持続可能な成長を達成するという長期的に有利な戦略として使えるのです。

この価値の部分を投資判断の材料として使えるよう、企業が報告を通じてより能動的に情報発信することを<IR>という枠組みは目指しているのです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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