CSR報告書に3つの潮流-「デジタル化」「対話」「ストーリー」

第2の流れは「対話」だ。大和ハウス工業は今年7月から、新しいステークホルダー・ダイアログの形として「ダイワログ」をウェブ上で始めた。

第1回目は、同社の樋口武男会長と、環境ジャーナリストの枝廣淳子さんによる「対話」を掲載した。

これまで日本企業のステークホルダー・ダイアログは年に1回、儀式的に開く形が多かったが、同社は今後、年に数回の「対話」を重ね、順次、ウェブに掲載していく。

CSRの本質は、企業がステークホルダーとの「対話」を重ね、企業が事業を通じて社会的課題を解決していくことにある。その意味で、自社のウェブサイトで対話を重ねる作業は、日本企業各社にとって意義深い機能になる。

ヤフーの新しいCSRサイトも、「対話」という意味でとても秀逸なコンテンツだ。

2012年6月に就任した宮坂学ヤフー社長(45)と、歌手のMISIAさんが内容の濃い対談を繰り広げている。

(以下、同サイトから引用) MISIA: 私は、長崎で生まれ平和教育を受け、紛争問題に心を痛めました。同時に幼少期を自然豊かな対馬で過ごし、その恩恵を受けて育ちました。また、子どもの頃から地域としてのアフリカに興味がありました。そして、自分の中で、それらの問題は全部つながっていると考えるようになり、2007年にケニアでその思いが形になりました。貧困の中にあっても自給自足を営む精神的に豊かな人はいたけれど、環境が破壊されれば、その生活も壊れてしまう。貧困と環境問題の根っこは同じです。
宮坂: 僕も山口の周防で育ち、目の前が海だったのでその感覚はよくわかります。魚を獲ってそれを糧にした経験があるので、リアリティのある情報として身体が覚えている。しかし、僕の時代でさえ、砂防堰堤やダムのせいで、海や砂浜はもはや自然の形ではありませんでした。(引用終わり)

このサイトは、とてもスタイリッシュにデザインされている。それもそのはず、インタビューの専門誌「Switch」とのコラボレーションだそうだ。

同社広報室の羽入正樹リーダーは「昨年、ヤフーの役員が10歳以上若返った。これを第二創業的な位置づけとして、新しいブランドを目指している」と説明してくれた。

いわば、これまでの単なるブランディングから、「ソーシャル・ブランディング」という新しい試みで、新たなYahoo!ファンを開拓する狙いだ。

同社は6月11日、運営するYahoo!JAPANのホームページで、画面右側の広告枠の一部をNPOなど非営利団体に無償提供するサービス「Links for Good~クリックで、世界を変える~」を始めた。

ボランティアや募金の募集やイベント情報を掲載し、個人によるボランティアや募金活動を拡大させるのが狙い。無償提供する広告枠は5億PV(月間)と大手メディアによるウェブPVを遥かに上回る量で、NPO活動を支援する。

ヤフーのソーシャルアクション室の佐竹正範室長は「自らが苗木を持って木を植えに行くよりも、木を植えたい人と実際に植えている人をマッチングすることが当社の役割」と話す。今後は、「Links for Good」で提携したNGO/NPOの代表たちとの対話をウェブ上で展開していく。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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