「選んで食べれば魚は残せる」――MSC(海洋管理協議会)CEOルパート・ハウズ氏インタビュー

――マクドナルドの取り組みの広がりは、MSCの働きかけによるのでしょうか。
いいえ。MSCはボランタリーな団体で押し売りはしません(笑)。あくまで、企業や組織に内在する、漁業に危機感を持つ個人が出発点となって、各プロジェクトがスタートするのです。

例えば北欧のスーパーに並ぶMSCのポスターも、広告料を払ったのは我々ではありません。漁業者や小売店が自ら出資して、MSC認証の存在をアピールしているのです。

■ 米ウォルマート、MSC100%目指す

――日本ではまだ、イオンや生協など限られた店舗でしかMSC商品を見かけません。
MSCは、天然水産資源の世界唯一のエコラベルです。オランダやドイツでは、店頭の約4分の1の魚にラベルが貼ってあるほど普及しています。その背景には、彼らがエコラベル全般に慣れていたこと、そして何よりも、魚の減少に気付いていたことがあります。

持続可能な漁業を後押しするには市場の仕組みの改革が不可欠で、その大前提が「知ること」なのです。米小売大手のウォルマートは、現時点でも扱う天然魚の約70%がMSCですが、100%を目指すと宣言しています。認知度が上がれば、日本の市場も徐々に変わってくるでしょう。

――日本で人気のマグロやウナギが減っています。MSCの仕組みで救えるのでしょうか。
ウナギのMSC認証は前例が無いですが、マグロなら米国で認証例があります。MSCは万能薬ではありません。政府による規制も消費者の認知も必要です。

しかし少なくとも、MSCの商品とそうでない商品があれば、消費者には「漁業の質を比べて買う」という概念が生まれます。解決策はきっとあるはずです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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