「出る杭は愛される」、ベン&ジェリーズのCSR戦略とは

楽しさを信条とするB&J。バーモント州本社のオフィスには、1階と2階をつなぐすべり台がある

――扱う問題は大変シリアスですが、B&Jのアプローチはいつもユーモアにあふれています。

「何事も楽しくあるべき」という伝統がB&Jにはありますし、面白おかしく、楽しく言われた方が、人はずっとオープンになり、聞く耳を持つようになります。楽しくあることは、とても大切です。

■ 安易な割引ではなく、ミッションが全て

――B&Jは、ずっと変わらずに、3つの柱を企業使命としてきています。世の中の暮らしが良くなることを行う(社会ミッション)、最高品質のアイスクリームを地球や環境に配慮した形で提供する(製品ミッション)、利益を上げ成長する中で、ステークホルダーや社員に還元できる価値を増やしていく(経済ミッション)。素晴らしいミッションですが、ビジネス環境が厳しい時、社会や環境活動などへのコミットメントをどうやって維持しているのでしょうか。

ベン・アンド・ジェリーズは、ベンとジェリーが、1978年にバーモント州で小さなアイスクリーム・パーラーを開店したところから始まりました。

小さな会社がどんどん大きくなり、2000年にはついに、世界最大級の消費財メーカーであるユニリーバに買収されるまでになった。それは、B&Jにとっては非常に大きな変化でした。

また、近年のように、経済が停滞してビジネス環境が厳しくなることもある。

でも、何があろうと一番大事なことは、自分たちのこだわりや、何を大事にしているか、ということを絶対に曲げない、ということです。B&Jでいえば、3つのミッションは、何があっても、どれも切り離してとらえることはできない。3つがバランス良く達成されて初めて、B&Jの成功があるのです。

――とはいえ、売り上げが上がらないと、いろいろなことがやり辛くなるのでは。

例えば、売り上げを上げるために、クーポン(割引券)を配る、という販促の方法があります。消費者に「お試し」の機会を与えて、新たな顧客を呼び込むことを狙ったものです。

でもこれは、裏を返せば、期せずして消費者を「お試し上手」にしてしまっている。だって、クーポンの味を占めた客は、他のクーポンが出てきたら簡単にそちらに流れてしまうでしょう。そうなっては意味がないのです。

だから、クーポンのような短絡的なツールに頼るのではなく、もっと根本的なことにフォーカスするべきです。

B&Jでいえば、本当に大切なことは3つしかない。何をつくっているのか、どうやってつくっているのか、そして、なぜつくっているのか。

この3つが私たちの価値の全てです。そしてそれは、先ほどの3つのミッションにしっかりとつながっている。だから、その根本的な価値に即して仕事を進めることが大事です。

そこがぶれずに一貫してさえいれば、顧客やファンは信頼して付いてきてくれます。この信頼関係があるからこそ、難局を乗り越えたり、センシティブな問題に取り組んだりできるのです。

――B&Jの一員として働くことの醍醐味とはどんなものでしょう。

何といっても、B&Jのアイスクリームを食べた人は、笑顔になる。これが最高の喜びです。

毎年創立記念日には、ショップで一日中アイスクリームを無料で配るイベントをやるのですが、これが本当に楽しいのです。ファンやお客は、無料のアイスクリームのためではなく、B&Jのイベントに参加することが楽しみでわざわざ来てくれ、長い列を作って待ってくれます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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