米国の産休制度、職場復帰が簡単に--USワーキングマザー考(1)

■ マネージャークラスにもパートタイマーを採用

しかし、米国ではこうした状況で、通称「テンプ」と呼ばれるパートタイムを雇うことが多い。アルバイトといっても、仕事内容は責任ある仕事。マネージャークラスのポジションにも、テンプスタッフを入れることも少なくない。

ミシェル・ロブレスさん、サンディエゴでローカルエコテレビのプロデューサーを務める夫のブライアン・ロブレスさんと娘のマリアちゃん

先述のロブレスさんも、転職当時は、パートタイムという形で、産休中の社員の代理として入社したが、彼女はビッグ4時代にプロジェクトマネージャー職に就いていた。

日本でいうパートタイムとは異なり、単純にフルタイムスタッフのように、福利厚生が得られなかったり、年俸ではなく時給ベースで仕事をするというだけ。働き次第で、十分この点も交渉可能だ。

そのため、子育てをしながら仕事を続けたいようなキャリアを持った女性や、キャリアチェンジをしたばかりの男性など、フルタイムへの足がかりとして、このようなテンプの仕事で積極的な仕事をする人々も沢山いるのが米国だ。

日本のように、派遣社員やアルバイトと正社員の区別がはっきりしていて、仕事の善し悪しに関係なく、ステータスを変えるのが難しい環境に比べ、米国ではパートタイムで実力を見せれば、フルタイムの仕事を得ることも可能だし、パートタイムにも、福利厚生全てを与えるような企業も沢山ある。

今日本では「女性手帳」の発行云々で、女性の子育てとキャリアについて再び様々な論議が巻き起こっている。だが、何よりも、ロブレスさんのケースのように、周囲から祝福され、また仕事復帰や産休においても、職場ベースでのサポートを取れる体制が作れるかが重要だろう。

法律的や税制的な面でも、子どもを産み育てることのメリットを感じなければ、女性たちはキャリアを取るか、子育てを取るかのどちらかの選択に迫られてしまう。

どんなに良い環境が整えられたとしても、どんなにスーパーウーマンでも、自分以外の人間を育てることによる責任は、少なからずキャリアの面で何かしらの融通を強いられる。

自分が仕事を続けることで、子育てに専念している母親に比べ、ワーキングママが何かしら「罪悪感」を感じるのは、1度や2度ではない。

それゆえに仕事と子育てを続けることの「理由」を聞かれたら、「どちらも好きで、そして続けられる環境があるから」という答えを、できるだけ多くの女性たちから聞けるような社会環境作りを目指すべきではないか。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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