日本の子どもの相対的貧困率 先進国で下から10番目

■総合順位ではオランダ、北欧諸国に次ぐ6位/分野ごとのばらつきが顕著

日本の子どもの幸福度は、31カ国を対象とした総合順位では、オランダと北欧4カ国(フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)に次ぐ6位と、トップクラスでした。ただし、詳しくみてみると、それらの国々の状況とは少し異なることがわかります。上位5カ国は、全ての分野でいずれも成績がよいのに対し、日本は、2つの分野で1位になった一方で「物質的豊かさ」では21位となるなど、分野ごとに順位のばらつきが大きかったのです。阿部氏は、「5つの分野の成績には全般的に相関関係が認められるので、今回日本の成績がよかった分野も、将来的には悪化する可能性もあり得ます。そのような注意喚起として今回の調査結果をとらえてほしい」と述べています。

以下、分野別のハイライトです。

■<物質的豊かさ> 日本の子どもの貧困、先進国の中でも深刻

今回の調査で日本の順位がいちばん低かったのが、物質的豊かさの分野です。日本は31カ国中21位(下から11番目)で、子どもの貧困の問題が、先進諸国の中でも深刻な方であることが、あらためて明らかになりました。それぞれの国において貧困状態にある子どもの割合を示す「相対的貧困率」は、14.9%で、下から数えて10番目。また、貧困の深刻度を示す「貧困ギャップ」では、さらに順位を下げ、下から6番目となっています。さらに、子どもの実際の生活水準を比較するために用いられた「子どもの剥奪率」(8品目(本文参照)のうち2つ以上が欠如している子どもの割合)においても、下から11番目と、相対的な所得の貧困、物質的剥奪のいずれにおいても、日本は下位に位置づけられる結果となっています。

■<健康と安全> 低出生体重児出生率では最下位

健康と安全の分野については、日本の順位は31カ国中16位でした。子どもの死亡率や予防接種率では上位だったものの、低出生体重児出生率(2,500グラム未満で生まれる乳児の割合)で最下位だったことで、分野別の順位が引き下げられる結果となりました。日本は、低出生体重児出生率が70年代後半から2000年代後半にかけ倍増した特異なケースであることも、報告書は指摘しています。その理由としては、低体重の女性の増加、若い女性の喫煙の増加、妊娠中に厳格な食事管理を行う傾向、所得格差の拡大などが挙げられています。

■<教育> ニート率、4.1%で10位

教育分野に関しては、日本は、学習到達度(PISAテスト)の順位がフィンランドに次ぐ2位であったことなどから、分野別では、31カ国中で1位となりました。ただし、高等教育を受けている15~19歳の割合と、就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない15~19歳の若者の割合(いわゆる「ニート率」)においては、どちらも10位と、中位の順位となりました。

■<日常生活上のリスク> いじめを受けたことのある子どもは27.4%で12位

日常生活上のリスクにおいても、日本は分野別で1位となりました。この分野を構成する要素のうち、「健康行動」(肥満児の割合、毎日朝食をとる子どもの割合)においても、また、10代の出生率と飲酒という、将来に悪影響を及ぼす「リスク行動」においても、日本はトップクラスの順位でした(10代の出生率(4位)以外は1位)。この分野で唯一、日本の順位が上位ではなかったのが、いじめに関する指標です。日本では、いじめを受けたことがあると答えた13~15歳の子どもは27.4%で、30カ国中12位。日本の子どもたちの経験しているいじめの問題は、他の先進諸国と比較しても小さくないことが明らかになりました。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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