しかしながら、CSR元年と言われた10年ほど前、日本でも経団連含め業界団体がこぞって社会的責任基準や年次報告書の特別版を発行し、社内挙げてコンプライアンスを声高に謳っていたのが、完全に裏切られた感がして、呆然とした。
■ どこでも「ムラ社会」の日本企業
先日、米国人弁護士が「日本企業は法令を軽んじ、異国でも日本村を形成している」という甘ちゃん体質はいけないと猛省を促していたが、筆者もこうした体質が今回アダとなったとみている。
海外に出ると日系企業は「ムラ社会」を作る傾向がある。例えば、親会社・子会社という系列組織の村、財閥系の企業の仲間村、類似産業という同業の村、駐在員妻の共同互助会、日系人社会などである。
日本人には不思議と日本語という安心できる言葉が災いし、国内以上に、また異常に結束が固くなり、無理な無駄な共同体を作る癖がある。
欧米問わず海外では日本人が小集団で「こそこそ日本語で話す」ことは奇異に見えるらしい。一つは日本語が理解できないこと、そして大事なことは、欧米人とは話さないのに日本人同士だと大きな声で話すからだろう。
弁護士の指摘ではゴルフの接待(系列会社の間)、同業者との懇親会、親会社から出張でやってきた本社社員の接待も奇異に見られ、反トラスト法に触れる可能性があるという。
日本企業からすると「何故だ?何も違法なことはしていない」と言っても、それをきちんと英語で理路整然と説明できるかどうかが問われる。日本人弁護士も在米が長いと感覚が違ってしまうのも注意しておかないといけない。
■ 日本企業は相当の注意が必要
米国側にとっておいしい話もある。課徴金減免制度(leniency/リーニエンシー)というもので、司法取引が定着している米国の司法省が考案した自首・減免制度である。談合やカルテルにかかわった企業が違反情報を申告すると刑事免責を受けられる。
これは明らかに米国には有利だ。というのは、違反者から両手をばんざいして暴露してくるから摘発が容易だし、手間暇かからずに違反者を取り締まることができ、課徴金も取れ、その金額から自発的に露呈してきた人物を減免すれば良いからだ。
90年代から違反摘発に実績を上げ、日本でも06年1月から課徴金減免制度として採用されたものだ。
こうなると日本企業も海外特に米国での事業には相当な注意を払わないといけない。台湾やアセアン諸国と共同で防御体制を組むのも良いかも知れない。欧米とアジアの商習慣の違いを判らしめる効果もあるだろう。
日本では警察を筆頭に欧米駐在員をかなり免じてきた歴史がある。複数の駐在員が述べているが、交通違反しても英語を話せば許してくれたなどだ。警察官が面倒くさいからか、職務怠慢かどちらかだ。
弁護士の言い分は我々を起用してくれという話に落ち着く。これでは宣伝ではないか。
日本企業はカネ払いが良い、ビジネスでは厳しいが収監されるとか刑事訴追の話を持ち込むとすぐにカネで解決しようとするという常識(?)が米国人弁護士の間で蔓延しているのも事実だ。