CSVの元祖、ネスレの包括的CSRプログラムとは――下田屋毅の欧州CSR最前線(37)

ネスレは、2010年にデンマーク人権研究所とパートナーシップを締結し、人権影響評価を実施。そして2013年には、そのネスレの人権デューデリジェンス・プログラムの取り組みをステークホルダーに伝えるものとして、「ホワイトペーパー」を発行している。

ネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムは、下記の8つの柱の上に構築されている。

1) 人権を、新しいまたは既存の方針へ統合
2) 幅広い人権問題においてのステークホルダーエンゲージメント
3) 従業員に対する人権トレーニングと人権に関する能力開発
4) 企業活動に関するリスク評価
5) リスクの高い操業場所における人権影響評価
6) ネスレの人権ワーキンググループを通した人権活動のコーディネート
7) 人権活動を実施するための先進組織とのパートナーシップ
8) そのパフォーマンスに関するモニタリングと報告

ネスレは、このように国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をネスレ・人権デューデリジェンス・プログラムにより実施している。また人権問題は、「児童労働」、「責任ある調達」、「サプライヤーの人権」として、ネスレのマテリアリティ分析の中で、ネスレとそのステークホルダーにとっての最優先事項として取り上げている。

同じくネスレのCSVを支える「環境のサステナビリティ」は、「環境製品ライフサイクル」、「農業原材料」、「工場の環境の高効率化」、「パッケージの改善」、「輸送と配送」、「持続可能な消費」、「生物多様性」を項目として取り上げ、ネスレのバリューチェーン全体に適用されている。

ここでは、廃棄物ゼロへの取り組みや輸送の改善による二酸化炭素排出量とエネルギー消費量の削減、また、生物多様性、森林の転用および破壊的な収穫、水資源管理に関する保護対策を「責任ある調達ガイドライン」に盛り込むなどをして実施している。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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