CSVの元祖、ネスレの包括的CSRプログラムとは――下田屋毅の欧州CSR最前線(37)

■CSVの3分野は本業に近いテーマで

そしてネスレ社会ピラミッドの一番上にくる「CSV」だが、ネスレが力を入れているCSVの3分野は、「栄養摂取」、「水資源」、そして「農業・地域開発」で、これらは、ネスレの本業に近いテーマであり、そしてグローバルで大きな課題の解決にも貢献するものだ。

またパーソンズ氏は「ネスレのCSVには、フェアトレードが含まれるので、ポーター教授の定義するCSVとはこの点では違う」と話す。

そして、ネスレは、これら「ネスレ社会ピラミッド」に関する事項を「事業運営に関する10の原則」にちりばめて、この原則に則って企業活動を行っている。

<消費者>
1.栄養・健康・ウエルネス
2.品質保証と製品の安全性
3.消費者とのコミュニケーション
4.ネスレの事業活動における人権

<ネスレの人材>
5.リーダーシップと責任ある行動
6.職場の安全衛生

<サプライヤーと顧客>
7.サプライヤーおよび顧客との関係
8.農業と地域開発

<環境への取り組み>
9.持続可能な環境への取り組み
10.水資源

また、この10原則の中の「ネスレの人材」という項目においては、従業員に対する安全衛生の確保やエンゲージメントについても実施している。

このように、ネスレはCSVの実践とともにCSRの重要な要素についても進め、包括的にCSRを実施している。CSVの実践を進める上で参考になる事例と思われるので、是非参考にして頂きたい。

下田屋毅(しもたや・たけし):
在ロンドン CSR コンサルタント。大手重工業会社に勤務、工場管理部で人事・総務・教育・安全衛生などに携わる。新規環境ビジネス事業の立上げを経験後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。欧州と日本の CSR の懸け橋となるべくCSR コンサルティング会社「Sustainavision Ltd.」をロンドンに設立、代表取締役。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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