米証券取引委の「紛争鉱物」情報開示義務で混乱続く――日本企業も「当惑」

なぜ紛争鉱物の情報開示が米国憲法違反に相当するのかは日本人には理解しにくい部分があるが、表現の自由を保障した「米国憲法修正第一条」が営利広告についても自由だとした判例があり、紛争鉱物について「情報開示しない」ことについても、広義の「表現の自由」であることを裁判所が認めた模様だ。

4月28日には、この違憲判決を受けて、SECの最高意思決定機関(日銀の政策委員会に相当)の委員5人のうち2人が、紛争鉱物規則は違憲であると主張し、規則の執行を停止するよう共同声明を発表した。

いわば身内からの反乱にあわてたSECは翌4月29日、判決で違憲とされた部分以外については、当初予定通りの義務付けを行うとし、次のような善後策を発表した。

該当企業は、その製品について「紛争鉱物ではない」(DRC conflict free)、「紛争鉱物ではないと判定されない」(Not been found to be DRC conflict free)、「紛争鉱物との判定不能」(DRC conflict undeterminable)、という結論部分に関しては、情報を開示する義務はないという内容だ。一方で、5月2日には、規則全体の延期は拒否すると表明した。

これを受けて訴訟の原告側は5月5日、控訴裁に規則全体の延期を求める申請書を提出。原告側は、規則の重要な要素である「紛争鉱物であるかどうか」を示す表現が違憲とされたので、もはや規則として機能しなくなったとして、規則を一時的に延期することを求めている。

「紛争鉱物」の情報開示義務の履行期日は6月2日まで。目前に迫っている中での米国での混乱に、日本の自動車メーカー各社は困惑を隠しきれない。

電子機器・精密機械メーカーの業界団体JEITA(電子情報技術産業協会)も「事態の推移を見つめ、現在、報告義務とされている紛争鉱物のデュー・デリジェンス(実態調査とリスクの事前予測)に関するレポートを粛々とまとめるだけ」という。

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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