北米や欧州のウナギはそのために漁師が乱獲して激減したといわれる。ウナギの養殖は、商業ベースでは産卵に成功していないので、天然の稚魚を養殖池で育てるだけである。よって食べれば食べるほどウナギ資源は減っていく。乱獲の結果2009年にはヨーロッパウナギは絶滅の危惧ありとしてワシントン条約で国際取引が規制されるに至った。
昨年のウナギ高騰時、マスコミ各社はウナギの不漁と中国人の需要が増えているためと報道した。ウナギ激減の背景には複雑な要因があるとされるが、要因の一つに私たち日本人が世界のウナギをすでに大量に食べてしまっていたことも忘れてはいけない。
同様に日本人が大好きだが激減している魚にクロマグロがある。国際機関、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の昨年末の報告によると、漁獲がなかった時代の資源量の3.6%程度に減少しているという(注:勝川俊雄 三重大学准教授、公式ブログより)。
クロマグロについては2010年ワシントン条約で国際商取引を全面禁止種リストに加える提案がされて話題になった。ちなみに、マグロにはビンチョウマグロやらキハダマグロなど多種あるが、メジマグロはご存じだろうか。これは新種のマグロではなく、体長50-60センチのクロマグロの稚魚である。
成魚を採捕ることが問題になっている魚の稚魚を私たちは知らずに食べていることになるのだ。ちなみに今回のイベントでも、「日本人は海洋資源を乱獲しているが、どう考えているのか」という論調で話をされることが少なからずあった。
日本人の魚に対する姿勢との大きなギャップがそこにある。その理由として欧米ではスシブームなどにより、魚はヘルシーで美味しいが資源枯渇が懸念されている高級食材という触れ込みで普及しているのに対して、日本人にとって魚は以前から庶民にとっても、あまりに身近な食材であり、わざわざ情報を集めて勉強するという発想がないからだと思われる。
今回モントレーのイベントで講演した英国の有名シェフで海洋保護活動家のヒュー・ファーンリー・ウィッティングストール氏は彼の魚料理の本の中で、クロマグロについて「スシバーでは、勧められても食べないように。あなたはパンダを食べますか」と記載している。
【かわぐち・まりこ】2010年~2011年大和証券グループ本社CSR 担当部長を経て、2011年より大和総研調査本部主席研究員。担当分野は環境経営・CSR・社会的責任投資。社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長、など。
(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第10号(2013年7月5日発行)」から転載しました)
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