日本からはまだ住友化学、伊藤忠商事、クルック、ユニ・チャームの4社のみだが、情報共有のプラットフォームとして広いネットワークを形成している。プロジェクトの内容もCSRからコアビジネスへシフトしているのが特徴で、日本企業ももっと関心を寄せてもよい。
例えば、ユニ・チャームの場合、衛生用品の40%を中東、北アフリカで生産しているが、2020 年までの生産拡大戦略で、エジプト、サウジアラビア、インド、タイ、ベトナムで8,000 人の女性を新たに雇用する予定だ。
その一方、包装の簡素化によって低価格を実現、生理用ナプキンやおむつを買えなかった低所得者層にも商品を提供する。女性が生理期間中でも経済活動に従事できることで、MDGsの目標3(ジェンダー平等の推進と女性の地位向上)の達成に貢献する。また、東日本大震災の被災地で「東北コットンプロジェクト」の事務局を運営しているクルックと総合商社の伊藤忠商事は、インドでのオーガニックコットン・プログラムに参加。低所得者層3万人がオーガニック栽培に移行するのを支援する。
農薬による健康被害がひどい通常の栽培より3割高の値がつくオーガニックコットンは認証を受けるのに3年かかる。その間はオーガニック栽培を義務づけられるが、オーガニックコットンとしての値段で売ることができないシステムになっている。このため、農薬や化学肥料を使わないオーガニック栽培への移行が困難になっている。
この移行期の「プレオーガニック・コットン」(POC)を通常価格より高く買い上げることにより、健康被害が改善される一方で、農民の収入増が期待できる。2008年からパイロット・プロジェクトは実施されているが、MDGsの最終期限となる2015年までに両社は、5,000トンまで生産を増やし、アパレルメーカーの数も250にしたい考えだ。これはMDGsの目標1(極度の貧困と飢餓の削減)に貢献するのだという。コアビジネスで途上国を支援する時代が到来しつつあるようだ。
【はらだ・かつひろ】日本経済新聞社ではサンパウロ、ニューヨーク両特派員。国連、NGO、NPO、社会起業家のほか、CSR、BOP ビジネスなどを担当。日本新聞協会賞受賞。2010 年明治学院大学教授に就任。オルタナ・CSR マンスリー編集長。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など。
(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第2号(2012年11月5日発行)」から転載しました)
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