政府・市民社会との連携でCSRをより効果的に【CSRフロンティア】

ISO26000では、CがとれてSRになったが、当然の帰結であろう。今や、必要なのは持続可能な社会というコンセプトと、それを実現するためのグローバル・ガバナンスである。思えば、こうした時に、日本が東日本大震災を経験した意味は大きい。

極めて不幸な出来事ではあるが、これを機にCSRの新たな可能性を探る機会にできないか。震災ではすべての人が支援に向かった。政府はもちろん、自衛隊、消防、警察だけでなくユニセフもWFPもNGOもやってきた。阪神淡路大震災で設立されたNPO、地元ボランティア団体の活躍も目覚ましいものがあった。

しかし、何といっても特筆すべきは企業の頑張りではなかったか。寄付や物品提供だけではない。社員ボランティアや本業での支援が多かった。CSRがこうした形で発揮されたことは、日本の未来に明るい光を投げかけている。問題は、この経験をどう生かすか。日本と世界の持続可能な社会実現のために何をするかである。

重要なのは政府、企業、市民社会の3者によるプラットフォーム型の連携だ。企業も万能ではない。より効果的なCSRを考えた場合、こうした連携は不可欠だ。例えば、日本には外務省、経済界、NGOが協力して設立したジャパン・プラットフォームという緊急人道支援システムがある。

これをアジア各国につくる「アジア災害支援プラットフォーム」構想が浮上している。このところ、アジア太平洋地域では、台風、洪水、サイクロン、地震など自然災害の発生が急増している。しかし、災害対応は必ずしもスムーズではない。

被災した国で政府、企業、市民社会が設立するプラットフォームが支援活動を行う一方で、アジア各国のプラットフォームと連携、海外からの支援に対する受け皿としての機能を持たせたらどうかという考えである。

当然、各国に展開する日本企業も、この仕組みの中で積極的なCSRを展開できるわけである。

【はらだ・かつひろ】日本経済新聞社ではサンパウロ、ニューヨーク両特派員。国連、NGO、NPO、社会起業家のほか、CSR、BOP ビジネスなどを担当。日本新聞協会賞受賞。2010 年明治学院大学教授に就任。オルタナ・CSR マンスリー編集長。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第1号(2012年10月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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