CSRレポートのトレンドから見えてくるもの【CSRコミュニケーションのこれから】

一方、「経営とCSRの一体化」においては、中期経営計画や経営ビジョンにおけるCSR の位置付けを明確化し、経営とCSRとの関係性について訴求している企業が目立ちました。また、環境問題をはじめ、エネルギーや人口、高齢化問題など、事業活動とかかわりがある(今後かかわりが出てくるであろう)「社会課題を明確化」して掲載するケースも多く見られました。これは、「事業活動を通じて社会課題の解決に貢献していく」ことをストーリーとして伝えるもので、読者の納得感も得られやすく、CSVを実現していくうえでも非常に効果的であると思われます。

上記でお伝えした「経営とCSRの一体化」と、「社会課題の明確化」を伝えることは、実は従業員に対する効果が高いと考えています。CSRと中期経営計画等の関係性を伝えることは、CSRを単にコンプライアンスや社会貢献だと考えている従業員に対し、事業とのかかわりのなかにCSRがあるという気付きを提供するとともに、「自分たちも意識していかなくてはいけない」という意識啓発にもつながります。また、社会課題を明確化して伝えることは、日々、イノベーションを起こせ!とはっぱをかけられている従業員に、アウトサイドインの視点を意識させ、研究・事業開発に取り組んでもらうきっかけになると考えています。さまざまな社会課題に対して高い感度をもってもらうことが、イノベーション創出への近道になるはずです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の例えが適当かどうか悩ましいところですが、人口・高齢化などの既に見えている課題を答えとして従業員に提供するのではなく、長期的な視野で社会課題をさまざまな関係性から考えていけるような、人材育成が今後より重要になってくると思っています。


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【まえだ・けいた】15 年以上にわたり、CSR、IR のコミュニケーション支援に携わり、現在はインターナルコミュニケーションも含め、コーポレートコミュニケーショントータルプロデューサーとして幅広い領域をカバーする。とくにCSR 戦略・体系構築支援を強みとする。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第5号(2013年2月5日発行)から転載しました)

前田 啓太氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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