編集長コラム)社員を「サーフィン」と「田植え」に行かせよう――ある会社のユニークな試み

田植の様子
田植の様子

この研修に参加した各社はこの数年、エコプロダクツ展やアースデイなどに積極的に出展してきたり、産業廃棄物処理業界としてCSR推進のプロジェクトを立ち上げたりもしている。

中でも白井グループは国際青年環境NGOのA SEED JAPANと組んで、携帯電話のレアメタルを回収・換金し、レアメタルの産地であるコンゴのゴリラ保全を支援するプロジェクトも手掛けている。

そうした努力が実って、以前なら採れなかった大学や大学院の新卒を採用できるようになった。同じように加藤商事には、東大大学院の卒業生も入社してくれたという。

産業廃棄物処理の現状(日本産業廃棄物処理振興センター)によると、全国の不法投棄の件数は2004年の554件から2010年には187件と約3分の1に減り、状況はだいぶ改善されてきた。

産業廃棄物焼却施設から排出される排ガス中のダイオキシン類の量も、1997年の1500グラムから2010年には16グラムと大幅に低減された。

それでも、残念なことに、産業廃棄物業者にはいまだグレーなイメージが付きまとう。単に法令を遵守しているだけでは誰も褒めてくれない。であれば、積極的にグリーンなイメージを打ち出すことが、自社の経営や採用、そして社員のモチベーションアップに役立つのだ。

田植えにしても、普通の田んぼではなく、「有機農法」「合鴨農法」にこだわる。それが社員の意識をさらに高めるのに役立つ。

今回の研修は、中堅企業にとって、より実践的なCSR戦略ということができる。農家の人たちと話すこと自体が、CSRで最も求められる「対話」の機能を果たす。

なにより、CSRを起点にした「ソーシャル・ブランディング」の素晴らしい実践例だ。社員の意識を高め、プライドを持たせることは、従業員満足度(ES)はもちろん、顧客満足度(CS)の向上にも役立つ。それがひいては、企業価値を高め、顧客創造につながる。研修を見ていて、こうした経営者の努力がそろそろ実るころだと確信した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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