ミア・オーバーオール (CSR アジア バンコクAIT センター)
農林鉱業などの一次産業や新たな地域に参入する企業は、コミュニティとの衝突に直面しがちだ。操業ライセンスを得るために、従来は村長や地域に「言い値の支払い」をすることが常套手段であった。ただ、そうした交渉はうまくいかないのが常であり、衝突に至りがちでもあった。
2012年9月に北京で開催されたCSRアジア・サミットの分科会では、この課題についても議論され、コミュニティに関わる課題について、補足し合う二つの見方が提示された。
国際NGOケア・インターナショナルの民間セクター・スペシャリスト、ティム・ビショップ氏はコミュニティに関するモデルとしてバングラデッシュのカシューナッツ農園と、スリランカの茶農園での例を紹介した。サラワク・エネルギー社のCSR担当シニア・マネジャーのスティーブン・バーホロミューズ氏はマレーシア・サラワクでのコミュニティとの関わりについて発表した。
ケアは企業が地域との衝突を避けるために、その芽に敏感になるように心掛けてきたという。特に、職場やサプライチェーンなど、その企業の影響圏を検証。マイナスの影響を避け、プラスの影響を拡大するように努めてきた。ケアは、コミュニティに製造や加工、流通の過程から関与してもらうモデルを開発。「企業とコミュニティとの関わりはビジネスの範囲のすべてに及ぶべきだ」と強調する。
コミュニケーションは継続的に
ケアは20年間にわたりスリランカの茶農園で、人種問題による衝突や性差別による暴力、賃金をめぐる衝突などに対応してきた。そして、ミニ議会のような「コミュニティ開発フォーラム」を発足させることで、地域での意志決定の仕組みに労働者を積極的に関与させ、事態を改善できたという。
バングラデッシュでは、賃金など労働問題と離職率などの職場の問題を組み合わせたり、そうした課題に対処するよう、小売業者と工場のマネジャーに訓練の機会を提供した。コミュニティからも複数のステークホルダーがフォーラムに参加することで、労働者の生活向上と職場の技能向上がもたらされるようなプログラムを開発できた。