企業トップ自らジェンダー平等の推進を(続)【ダイバーシティとジェンダー】

また、同社のサービスが根付いて地域の女性たちも同社とともに積極的に行動しています。つまり、社会貢献事業として、駅前広場のトイレ清掃や通学路の交通整理、高齢者や障がい者の見守り、健康のための体操やダンス教室の開催、地域の女性が日替わりでシェフを務めるカフェの運営、手芸品を販売できるレンタル・ボックス事業なども行っています。最近は東日本大震災の被災地の支援活動も活発です。

同社のトップは、女性の従業員は仕事と家庭生活の両立をよく保障すればきっと大活躍すると考えてこういう経営にしています。実際、同社では女性の従業員がアイディアを生かして、営業や企画、社会貢献でも男性と平等に働いています。

こうした、社内の配属や仕事内容、給与にも男女の差別がないことが、女性社員の元気のもとになっています。

また、同社は障がい者の雇用や生活困窮者の働く場づくりにも積極的です。社内はダイバーシティ・マネジメントが生かされていて明るい雰囲気です。こうしたビジネス手法により、同社は東日本大震災後の打撃も吸収して、営業利益は前年比で20%アップしました。

インクルージョンを進める企業文化をつくる

以上の2社の取り組みを、WEPsの原則1の基準によって整理すると、次のような特徴がよく分かります。第一に、トップの経営方針が明快に示され、すぐに具体化するアクションに取り掛かっていることです。トップのリーダーシップが迅速に浸透できるのは中小企業の強みです。

第二に、トップのリーダーシップは社内外のステークホルダー、特に女性の従業員や地域の女性を巻き込んだ(インクルージョン)手法で実現されます。中小企業は地域密着型で、地元の人材を雇用するので、従業員と住民が重なることも強みになっています。次回はWEPs の原則2と、社内における女性のエンパワメント推進のための制度化の事例をご紹介します。

※ WEPs の原則1は前号を参照してください。

【おおにし・さちよ】博士(法学) 立命館大学教授 専門は憲法、ジェンダーと法・政策。主著に『女性と憲法の構造』(信山社、2006 年)、「企業による人権尊重の展開」(法學志林111 巻1 号、2013 年)など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第3号(2012年12月5日発行)から転載しました)

大西 祥世氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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