ヨーロッパウナギは2008年にIUCN「絶滅危惧IA類」に、2009年にはワシントン条約付属書II類に指定され、すでに国際取引の規制対象になっている。
日本で流通するウナギの99%は養殖で、天然ものは1%に過ぎない。ウナギの場合、養殖のためには天然の稚魚(シラスウナギ)の捕獲が必要だ。ニホンウナギの稚魚の漁獲量は、1960年代のピーク時(年間約230トン)から、2010年にはおよそ7分の1にまで下がった(独立行政法人水産総合研究センター調べ)。
漁獲量減少の原因は、潮流変化や開発などによる環境変化、消費量の増加が指摘されているが、要因は複合的であるため特定は難しい。
■DNA判定が波紋呼ぶ
そんな中、環境NGOのグリーンピース・ジャパンの調査が波紋を投げかけた。同団体は今年5月から、店頭で売られているウナギの実態調査を行ってきた(調査対象は、イズミヤ、フジ、アークス、イズミ、マルエツ、ヨークベニマル、イオン、オークワ、西友、ダイエー、バロー、平和堂、ユニー、ライフ、イトーヨーカドーの15社)。
同団体は、各社にウナギの品種を問うアンケートを実施するとともに、店頭で購入した輸入ウナギの品種調査を行った。第三者機関であるビジョンバイオ(福岡県久留米市)が、14社17商品のサンプルをDNA分析し、アンケートの回答と照合した。
その結果、4社4商品で、企業の回答とDNA分析結果の不一致が確認された。そのうち、イズミ(広島市)がアメリカウナギとして販売していたウナギが、実はヨーロッパウナギだったことが判明したのだ。
スーパー名 | スーパーの回答 | DNA検査結果 |
イズミヤ | 回答拒否 | ニホンウナギ |
フジ | 回答拒否 | ヨーロッパウナギ |
回答拒否 | ヨーロッパウナギ | |
アークス | ヨーロッパウナギ | アメリカウナギ |
イズミ | アメリカウナギ | ヨーロッパウナギ |
ヨークベニマル | ヨーロッパウナギ | アメリカウナギ |
マルエツ | ヨーロッパウナギ | アメリカウナギ |
ヨーロッパウナギ | ニホンウナギ | |
回答訂正:ニホンウナギ | ||
バロー | ニホンウナギ | ヨーロッパウナギ |
回答訂正:ヨーロッパウナギ | ||
イオン | ニホンウナギ | ニホンウナギ |
オークワ | ニホンウナギ | ニホンウナギ |
西友 | ニホンウナギ | ニホンウナギ |
ニホンウナギ | ニホンウナギ | |
ダイエー | ヨーロッパウナギ | ヨーロッパウナギ |
平和堂 | ヨーロッパウナギ | ヨーロッパウナギ |
ユニー | ジャポニカ種 | ニホンウナギ |
ライフ | ヨーロッパウナギ | ヨーロッパウナギ |
イトーヨーカドー | - | - |
※イトーヨーカドーでは輸入ウナギの販売が確認できず、今回の調査では「データなし」となっている
イズミはこの調査結果を受け、該当商品のトレースバック(経路検証)を数日以内に実施。また、今回の輸入ウナギが中国産であったことから、中国産の取り扱いを中止した。販売商品のDNA検査を自社で行い、社として対策案を業界団体へ働きかけることを検討すると約束した。調査対象の大手スーパー15社のうち11社は、段階的なものを含め、11社が「ヨーロッパウナギの販売を中止する予定」と回答した。