[サプライチェーン]マクドナルド鶏肉事件の教訓――安易なアウトソースは命取りに

特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会・上原修理事長

日本マクドナルド社が期限切れの鶏肉を輸入していた問題は、同社の業績を大きく揺らがせる事態となった。サプライチェーンでの品質管理に詳しい上原修・特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会理事長に、同社のサプライチェーン管理のどこに問題があったのか、寄稿して頂いた。

今回の日本マクドナルドによる鶏肉問題の本質とは何であろうか。筆者は二つの大きな問題を内包していると思う。一つ目は「安易なアウトソーシング(外部委託)判断」であり、もう一つは「グローバルサプライチェーンの構築に必須な人材の不足」である。

問題のサプライヤーは、米OSIグループの子会社・上海福喜食品有限公司である。同社は保存期限切れの変質した肉類原料を大量に使用し保存期限シールを貼り替えるなどの偽装工作をしていた。

こうした肉で製造されたチキンナゲットやステーキ、ビーフパティは主要なファストフードチェーンに販売されていた。特に鶏肉加工品は中国に優先的に供給されていたという。

報道ではマクドナルドやケンタッキーフライドチキンに責任を押し付けているが、中国政府の監督不足もある。ただし、外資系企業は中国の食品安全管理が飾りだと分かっているのだから今回のような不法な手段でコストを抑えたのだろうと勘ぐらざるを得ない。

1・安易なアウトソーシングは危険

内外作判断(Make-or-Buy)は企業の最優先課題であり最高機密だということが蔑ろにされている。精密な計算をせずに、しても結果主義で内容は後付け、では責任は誰がとるのか。

最終消費者を念頭に置かず社内の原価、株主の顔ばかり気にしていると本来の経営判断ができなくなる。確かに2000年代はアウトソーシングに時代と言われてきた。この戦術は過去においても実施されていたが、「選択と集中」という経営方針へのシフトから自社の中核資源や目標に再度注目し経営資源を投入する代わりに他の業務を外部へ委託すること、このマネジメント法は欧米でも持てはやされた時期があった。

ただし、インソースからアウトソースへ移行する際にはトップダウンの厳格で精密な比較分析が求められる。ファストフードにおける鶏肉など主原料は内作(社内で製造する)が基本で、外部委託は考慮外、あるいは関連会社での製造が次善の戦術だろう。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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