[サプライチェーン]マクドナルド鶏肉事件の教訓――安易なアウトソースは命取りに

さて、海外ソースについてLCC(Low Cost Countries)や新興国調達(Emerging countries purchasing)、オフショアリング(Offshoring)と言われ、一時期もてはやされたが、この体制が全く甘いと言わざるを得ない。

日系企業は一般に海外に甘い、あるいは知らない故商社に任せるが、これが大失敗である。大手総合商社といっても、個々の部門は中小企業のようなものだし、まして商社内の部門競争は激しいため、買手に代わって生産体制や品質保証体制を精査する暇もないし、その能力も欠ける。

【提言】
I. 安易にアウトソースするな。
II. 取引は一対一でなく一対三対二対の階層で考えよ。
III. するなら経営者レベルで議論せよ。
IV. 何故内製できないか真剣に考えよ。
V. 海外立地の生産にはTCOで考えよ。(Total Cost of Ownership)

2.グローバルなサプライチェーンの最適構築

全体最適が目玉で誕生したサプライチェーン経営も各社が相変わらず部分最適に走るために全体を監視する職位、職務、また人材が欠如していることがわかった。サプライチェーンは供給源の信頼性と全チェーンを取り巻く関係者との相互理解が基本である。取引がグローバル化するということはサプライチェーンが同様に、いや同時にグローバル化することに他ならない。

国内では何とか効率的、効果的なサプライチェーンを築けても、それはステークホルダー会社がしっかりサポートしているからだということを曲解している輩が多い。それでも何とか機能するが、一方で海外の供給連鎖網は決して安楽に見ていられないものがある。どうも日系企業は人任せな点が多い。

日本流の持ちつ持たれつ式が機能すると思って途上国などに上陸するが、サプライヤーやトラッキング、ロジスティックという利害関係者との信頼関係の醸成、構築に思って以上の時間がかかる。言語、宗教上の問題もあるが、筆者はむしろ海外オペレーションに慣れていない日本人スタッフやローカル社員との意思疎通の欠如とみている。アジアでも前節で述べた複数のサプライソース調達も実現しているが
1)持続可能性
2)緊急時の対応
3)サプライチェーンの成長支援と育成
を問題視したい。

ここで再度マスコミ報道を確認する:

大手コンビニエンスストア、ファミリーマートも最大手ハンガーがーショップ、日本マクドナルドもチキンナゲットはタイと中国の数社から輸入しているが、主要仕入れ先の上海福喜とは2002年から取引を始めているという。そしてマクドナルドは仕入れ先の切り替えを進め、翌日には全店舗での販売を再開する方針と表明した。ファミナ社長によると同社は仕入れ前、社員を現地工場に派遣し、安全管理体制を点検した。発売前にも取引を仲介した伊藤忠商事が品質を確認した。中山社長は「かなり厳しくチェックした中で起きたのでショックは大きい」と述べる一方、「先方の原料のチェックまではしていない」ことも明らかにした。

この報道が真実ならば購買プロから言わせれば、サプライチェーンを実に甘く見ているとしか言いようがない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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