健康と安全の職場づくりは、男女の違いにも配慮を【ダイバーシティとジェンダー】

女性社員とのダイアログでニーズを浮き彫りに

事例に取り上げた男女別トイレは、これまで、労働安全や健康といった面からは重要視されていませんでした。しかし、女性もいきいきと元気に働くためには企業がこうしたごく日常的なことにまで配慮するのが効果的です。

WEPsの原則3は、生涯にわたる健康と安全を考慮することが、女性のエンパワメントに重要である、としています。リプロダクティブ・ヘルスなど、健康に関して男女で影響の差があることへの配慮も必要です。他方、妊娠・出産に直接関係がある・なしにかかわらず、女性を一括りにして、業種や勤務時間を制限して、その結果、女性の働く場や機会を狭くすることは、企業にとってもプラスになりません。

女性も男性もその能力を発揮して企業活動が発展するカギは、女性の社員の日常の体験にあります。女性の社員というステークホルダーとのダイアログが求められます。

次回は、少し海外に目を転じて、企業における女性のエンパワメントを支援する、諸外国のポジティブ・アクションをご紹介します。


【WEPsの原則3】健康、安全、暴力からの自由
a. 健康に関する女性と男性への異なる影響について考慮し、安全な労働条件と有害物質からの保護を提供し、潜在的なリスクを明らかにしましょう。これにはリプロダクティブ・ヘルスが含まれます。

b. 職場からあらゆる暴力を撤廃する方針を作成しましょう。これには、言動および/または身体的な暴力が含まれます。また、セクシュアル・ハラスメントを防止しましょう。

c. 健康保険またはその他の必要なサービスを提供するようにしましょう。これには、ドメスティック・バイオレンスのサバイバーを対象としたものも含まれます。また、すべての労働者に平等なサービスへのアクセスを保障しましょう。

d. 労働者本人および家族の受診とカウンセリングのために、男女の職場の時短をとる権利を尊重しましょう。

e. 労働者と協議し、安全について課題を明らかし、取り組みましょう。これには、通勤時や企業に関連するビジネスを行う際の女性の安全も含まれます。

f. 労働者の安全を確保する担当スタッフと管理職に対して、暴力の被害女性が示すサインの研修を行い、トラフィッキング(人身取引)、労働の搾取、性的な搾取に関する法律と企業の方針を理解させましょう。

【おおにし・さちよ】博士(法学) 立命館大学教授 専門は憲法、ジェンダーと法・政策。主著に『女性と憲法の構造』(信山社、2006 年)、「企業による人権尊重の展開」(法學志林111 巻1 号、2013 年)など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第5号(2013年2月5日発行)から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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