河口 真理子(株式会社大和総研調査本部主席研究員)
昨春、筆者が関わるNPO法人で事務局スタッフを募集した。弱小NPOなので、お給料は少ししか出せない。とはいえ、大企業の会員とのやり取りや海外からの問い合わせなども少なくなく、英語力や折衝能力も必要な仕事である。このような条件では応募がないのでは、と危惧したのだが、嬉しいことに早速二人から応募があった。いずれも大企業で5年以上のキャリアがあるが、出産子育てのため現在は専業主婦。お給料も欲しいが社会との関わりを持ちたいと考える意欲的な女性であった。
採用したのは、海外営業企画に携わっていた方で、英語力もばっちり。雇用条件を決める際の腹積もりとしては前任者と同じフルタイムという条件でなくても業務はこなせるだろうし、お子さんが小さいなら毎日でなくても構わない、という気持ちだった。
結局、週3回の勤務となったが、保育園などの行事と重なる時は業務日を振り替えたりするなど、かなりフレキシブルな条件にした。実際に働いてもらうと、仕事は早く、見過ごしていた改善案を提案をしてくれるなど、業務は極めてスムーズで、運営委員たちも活発化した。
知り合いの経営者たちに彼女の話をすると「ウチに欲しかった」と言われる。確かに、待遇面で劣る中小企業へ良い人に来てもらうのは至難の業のようだ。一方で、大企業である程度キャリアを積んだが、出産や夫の転勤などの事情で専業主婦中だが働きたい、という女性は少なくないのではないか。
地域活性のためにも女性の雇用整備を
しかし、いったん、退職すると、キャリアがあっても子育て女性の再就職のハードルは極めて高い。内閣府の調査によると家庭との両立ができずにいる30代~ 40代の女性の就労希望者は342万人と推計されている。