東京五輪を『三方よし』の「エシカル五輪」に--日本エシカル推進協議会が提言書

3.なぜ「エシカル五輪」なのか

1)サステナビリティ確保の標準化
環境問題に配慮し、持続可能な開発を促進する形で五輪大会を開催するようオリンピック憲章が求めて以来、2012年のロンドン五輪は持続可能な調達基準に従った調達を行い、2016年のリオデジャネイロ五輪も持続性の認証(MSCやASC)を得た水産物の提供を既に決定するなど、サステナビリティの確保は五輪大会開催におけるスタンダードとなっている。

2)環境配慮からエシカルへ
「環境の優先」を掲げる東京五輪は上記スタンダードに即しているものの、「サステナビリティ」が環境配慮にとどまらず社会的配慮をも含む包括的な概念であることへの理解が、オリンピック憲章においても日本国内においてもなお十分とは言えない。そうした中で、環境優先の東京五輪を社会的影響にも配慮した全方位的な「エシカル五輪」へと発展させることによって、五輪のスタンダードをさらなる高みへと押し上げる貢献を行うことができる。

3)時代の要請
2008年のリーマンショックを機に、経済効率の飽くなき追求がもたらす格差の拡大といった負の側面への懸念が国境を越えて広がる中で、人間性と持続性を回復する「エシカル」な経済社会のあり方および生き方が世界各地で模索されており、経済社会および生き方のエシカル化はまさに時代の要請となっている。

4)「成熟社会日本」後の社会ビジョン
巨額の財政赤字に急速な少子高齢化に象徴される「成熟社会」に入った日本において、若い世代、将来世代が安心して暮らせる社会ビジョンの確立が求められている。誰もが尊厳をもって暮らすことができ、豊かな自然や環境とも共生できる「人と環境に優しい」社会、すなわち「エシカル」な社会こそ、成熟社会に入った日本において確立すべき将来ビジョンと言える。それはまた、「もったいない」、「おもてなし」、「三方よし」といった、環境や他者、社会への思いやりに満ちた古き良き伝統に根ざした社会ビジョンである。これは「Rio+20」サミット以降、国際社会が目指してきた方向とも一致する。

5)「消費者市民社会」実現への寄与
2012年末に施行された「消費者教育推進法」は「消費者市民社会」の形成を目的としている。それは、「自らの消費行動が現在・将来にわたって内外の社会経済や地球環境に影響を及ぼしうることを消費者が自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会」、つまり「フェアでサステナブル(=エシカル)」な社会の形成を目ざしたもので、エシカル五輪こそがその実現に大きく貢献することができる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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