東京五輪を『三方よし』の「エシカル五輪」に--日本エシカル推進協議会が提言書

4.エシカル五輪を実現するための指針

エシカル五輪を実現するための指針には、以下が含まれる。
1)経済よし
「五輪特需」といった一時的な好景気に終わらせることなく、持続的な経済発展を確かなものとする事業や調達を行う。
将来世代にツケを回す公共事業を排し、末永く持続的に活用できるような良質なストックを形成する。
経済発展と環境保護の両方に資する環境ビジネスないしグリーン経済を醸成する。
経済発展と社会問題の解決の両方に資するソーシャル・ビジネス展開を促進する。

2)社会よし
五輪関連の調達を行うにあたって、震災被害の大きい東日本の復興に資する調達や、社会的弱者に配慮した調達(ハート購入=障がい者優先調達、途上国の零細な生産者に配慮したフェアトレード等)、児童労働や紛争鉱物を排した調達、中小企業に配慮した調達等、社会に配慮した調達を行う。
調達するモノやサービスが、そのライフサイクルのすべてにおいて環境および社会(末端の労働者・生産者を含む)に悪影響を与えず、好影響を及ぼすようなサプライチェーン・マネジメントを確保する。
ジェンダーに配慮し、女性の地位向上に資する調達や運営を行う。
あらゆる面において多様性を重視し、寛容でインクルーシブな(包摂性の高い)大会とする。
誰もが五輪を楽しむことができるよう、会場やその周辺にとどまらず、東京全体をバリアーフリーの街、ユニバーサルデザインの街にする(そうすることで、少子高齢化に対応した街とすることも可能となる)。
国内外の訪問者を歓待すべく、年齢や性別、障がいの有無、国籍等を問わず、幅広いボランティアの参加を得て、心のこもった各種サービスを提供する。
会場や交通機関、宿泊・観光施設にとどまらず、高齢者や障がい者に配慮し、かつマルチリンガルな(多言語による)サービスを提供する(情報面でのバリアーフリー化)。

3)環境よし
あらゆる面において、環境負荷を最小化し、自然との共生(生物多様性の保全・強化を含む)を図る。
公共交通機関や自転車道を充実させるとともに、カーシェアリングやパーク・アンド・ライド等の普及によって乗用車への依存を減らす。
太陽光や風力、バイオマス等による再生可能エネルギーを最大限活用するなど、地球温暖化を食い止め(カーボンニュートラル)、可能な限り逆転させる(カーボンマイナス)。
3R(再利用・再生利用・発生抑制)を推進するほか、環境に配慮したサステナビリティ調達 — 第三者認証型エコラベル(エコマーク、エコリーフ等)、MSC/ASC認証、FSC認証、フェアトレード認証、レインフォレスト・アライアンス認証、オーガニック認証された製品の調達– を行う。
事業活動から排出される環境負荷量(CO2排出量<SCOPE3>等)をLCA手法に基づき算出し、公開するなど社会責任行動を実践する事業者等からの調達を行う。

4)エシカルな組織運営/大会運営
組織運営/大会運営そのものをエシカルなものとすべく、女性や障がい者、高齢者、子ども、在日外国人等が意味ある参加のできる運営体制を築く。そのために運営方針をインターネットで公開して、国の内外から御意見をいただき実際の運営に反映させる。
誰にも開かれた大会とすべく、低所得者層等にも配慮した入場料の設定等を行う。
東京だけでなく、東京五輪に間接的に関わるすべての地方の人々や組織にも配慮が行き届くエシカルな運営を行う。そのためのエシカルマインド醸成セミナーや教育を行う。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..