CSR とコーポレート・ガバナンスを考える【企業と社会の関係】

谷本教授はまず、ここ数十年の間に、グローバル・ガバナンスのあり方が変わってきたことを指摘しました。ISO26000 の策定プロセスに代表的に見られるように、既存の枠組み・方法論では解決しきれない課題について、様々なステークホルダーが参画し新たな考え方やルールを創造していくことが重要になっています。企業が持続可能な経営を行っていくためにも、ステークホルダーの声を重視し、ステークホルダーとのかかわり合いの中で課題解決に取り組み、経営品質の確保・改善を図る必要があることを指摘しました。

齊藤弁護士は、コーポレート・ガバナンスを「会社経営者に対する牽制システム(組織体制)」と定義したうえで、会社が営む事業規模や特性に応じたリスク管理(内部統制システム)の整備が必要であること、会社のマイナス情報は会社経営改善の宝物であること、を指摘しました。そしてCSRとは、単なるリスクマネジメントの一形態ではなく、将来リスクのコンプライアンス、および企業の持続可能性のコンプライアンスであり、企業の持続的発展(=生き残り)のための重要な戦略であると指摘しました。

大久保氏は、ヨーロッパでは組織体制としてCSR部が存在することよりも、経営の中に組み込み全社的に取り組んでいくスタイルが増えていること、つまりCSR に取り組んでいるという宣言はもはや有効ではなく、いかに実施していくのかということが問われるようになっている、ということを指摘しました。また、複雑化する社会状況においては正しいルールをつくることが難しくなっているため、今や定められたルールを順守することよりも、ステークホルダーとの対話・議論を通じて落とし所となる新たなルールをいかに創造していくか、が重要になっていることを指摘しました。

続いて参加者も交えて、どんな課題に取り組むのか、そのためには誰がステークホルダーになるのかを明らかにし、ステークホルダーとの話し合いによってソフト・ローを創っていくことが重要であると、議論されました。次回のプレ・カンファレンスは2013年3月5日に実施予定です。詳細は、JFBSホームページで。

【さいとう・のりこ】原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学専任講師。jfbs

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第5号(2013年2月5日発行)から転載しました)

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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