不要な化粧品でお絵描き、リサイクルを楽しく

集まった化粧品とそれを絵具化したもの。アイシャドウが中心のため、色の数は多い
集まった化粧品とそれを絵具化したもの。アイシャドウが中心のため、色の数は多い

よく工夫して使う人ほど、どうしても余ってしまうのが化粧品。これを「画材」として再利用するのが福岡県福岡市の団体「プラスコスメプロジェクト(PCP)」だ。古コスメを回収し、アートに活用するアップサイクルを実現している。(オルタナ編集部=佐藤理来)

コスメブランド「エクセル」が行った調査によれば、使い切らないまま余らせる化粧品(古コスメ)の数は1人平均7.4個に上る。シーズン毎に新色を買ってしまったり、いざ付けたら色が合わなかったり、お土産でもらったが使わなかったりというケースも多い。

PCP創始者の坂口翠さんは、化粧品メーカーに勤めていたことで毎シーズン発生する廃棄を目の当たりにし、コスメを使い切れないという現状に葛藤を覚えていた。せめて何かポジティブな形で再利用できないかと考え、「画材に利用し、絵を描く」というアイデアが浮かんだ。

PCPは、2012年の創立以来、チークやアイシャドウといったパウダー系の化粧品を回収してきた。化粧品メーカーや百貨店、JICAなどと協力して21のイベントやワークショップも開催。集めた化粧品はケースから中身を取り出し、溶剤の一種メディウムを混ぜ、絵具にする。簡単な絵を描いたり、紙で作った花を塗ってみたり、使い方はさまざまだ。

ワークショップで作られた作品のひとつ。筆で簡単に扱えるので絵を描くこともできる
ワークショップで作られた作品のひとつ。筆で簡単に扱えるので絵を描くこともできる

回収協力者の多くは、化粧品を余らせてしまったことに罪悪感を覚えており、活用の場が生まれたことにほっとする人もいるという。廃品利用による啓発よりも、アートに昇華することでポジティブな思い出を作ってもらうのが狙いだ。

「化粧品は人を幸せにするものです。余ってしまうという現状は残念ですが、絵を描くという楽しい利用法を伝えて、人を笑顔にしたいです」(PCP川原眞実加さん)

創立から2年を過ぎ、参加者らからの反応も上々だが、拠点が福岡のため全国展開しにくいのが悩み。川原さんは、「今後は、個人でも絵具化できる『キット』を制作し、より多くの人に体験してほしい」と意気込む。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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