[サプライチェーン]イスラム国?が物流網を寸断している

そこで昨年の我が国に関係のある中東の事件を思い出してみよう。

1.日揮のプラント建設
2013年1月16日の早朝、アルカイダ系の武装勢力が、アルジェリア東部、リビア国境から60km西にあるイナメナスから西南およそ40kmの位置にある天然ガス精製プラントを襲撃した。襲撃された施設はアルジェリアの国営合弁企業によって経営されており、建設には化学プラントの建造に実績のある日本の日揮も参加していた。同地域のガス年間生産量は90億立方メートルあり、アルジェリア国内でのガス生産の10%以上を生産するものであった。
algeria

2.ビジネスチャンスと海外進出リスク
アルジェリアの武装集団による邦人拘束・殺害事件をきっかけに、海外進出企業のリスク管理が改めて問われ、現地の日本企業に重い課題を突き付けた。縮小傾向にある日本経済は、海外に成長の道を探るしか再生復活が見込めない。しかし、ビジネスチャンスをつかむためには大きなリスクを取らざるを得ないという厳しい現実がある。

そして、リスクは、大企業、中小企業を問わずに襲いかかるものだ。最初からあきらめたら、ビジネスチャンスどころかリスクだけを取ることになりかねない。筆者はとある講演会でリスク軽減について質問されたことがある。すかさず答えたのは、欧米の先進企業から必要なエッセンスを学び、できる範囲で取り組みを始めることだ。

政府のやり方を批判しているのではないが、民間で海外へ出ていくには自己防衛や武装が時には必要だと考えたまでだ。武装というと物騒に聞こえるが、これもまた日本的発想でマインドセットが必要な部分だろう。遊びの海外旅行で、事故が起きた時、事件に巻き込まれた時、日本国大使館は十分に面倒を見てくれたであろうか。こういうリスクを承知の上で自分の体は自分で守ろうという当たり前のことができないと海外進出の資格はないと見たい。

アルジェリアの人質事件は、テロの脅威などが特に高い危険な地域で操業する日本企業の安全対策については、企業の取り組みだけでは限界があることを浮き彫りにしたと言える。襲撃されたプラント施設を運営しているのはイギリスのBPとアルジェリアの国営企業だった。こうした状況の中で、一企業が情報収集によりテロの脅威が高まっていることをある程度察知できていたとしても、その対策には限界があったことは確かだろう。
 
但し、BPやアルジェリアの国営企業と日常的にセキュリティ情報を共有することは十分にできていたか、アルジェリア政府に対して警備の強化を要請することができなかったのかといったことなど、これらも済んでしまってから言うのでは遅いもので民間ベースで海外の有識者やリスクのエキスパート組織、欧米政府関連の会社と密に意思疎通を図れる体制を整えてから出て行って欲しい。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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