[サプライチェーン]イスラム国?が物流網を寸断している

3.中東でモノの流れが遮断
主題に戻すと、これまでトルコとアラブ諸国を結ぶ物流網に異常なことが起こっている。つまり、トルコからイラク、シリアを経由しサウジアラビアをはじめとする湾岸主要産油国に向かう重要な交易路があった。トルコはこの中で旗振り役となって中東域内経済を後押ししてきた。トルコ国際運輸組合では事件前に2200台/日のtラックが今では1500台にまで落ちているという。

原因は言うまでもなく治安の悪化である。トルコの対イラク輸出では7-8月は前年同期比40%も減少している。加えてシリアの混乱も逆風となっている。反政府武装勢力の内戦に加えてイスラム国の攻撃もあるからだ。陸路が駄目なら水路があるので、一部は船でエジプトのスエズ運河を通過してサウジアラビアに向かうが、当然コストは跳ね上がる。

それでも、日本が経験した大震災の時のように事業継続を活かせれば直ぐにではなくとも徐々に解決策は見つかるはずだ。この戦争は恐らく長く続くだろうから、トルコが交易の重要性とサプライチェーンを確保する意志があるなら、日本政府や企業にソフト支援を求めることができるだろう。サプライチェーンの寸断は、最も恐ろしい経済危機をもたらす根源なのだから。 

【うえはら・おさむ】特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会理事長、ESSECビジネススクール特任教授、法政大学経営大学院兼任講師

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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