[書評:窓から逃げた100歳老人] スウェーデン発のベストセラー小説

全世界で800万部という驚きの規模を誇るベストセラー。老人の波乱万丈な人生と珍道中が織りなすナンセンスさが痛快だ
全世界で800万部という驚きの規模を誇るベストセラー。老人の波乱万丈な人生と珍道中が織りなすナンセンスさが痛快だ

表紙には、室内履きをはき、スーツケースを引いた老人が描かれている。小説『窓から逃げた100歳老人』(西村書店)は、2009年にスウェーデンで発売されて以来、世界で800万部以上売れた上質のエンターテインメント小説だ。老人ホームを抜け出した老人のこれまでの波乱万丈な人生と、大金入りスーツケースを持って珍道中を繰り広げる現在が、二重構造で描写され、読むものを引き込む。(独ハノーファー=田口理穂)

主人公は、自分の100歳の誕生会から逃げ出すべく、老人ホームを着の身着のままで脱走するアランだ。どこでもいいから逃げようと室内履きで窓から外に出た。ただの老人かと思ったら、これまでの人生はドラマに満ちていた。

爆発物専門家としてスターリンや毛沢東、ド・ゴールなどに会い、歴史の流れに影響を及ぼす。原子力爆弾製造に一役買ったのもその一つだ。1905年に生まれたアランの人生を辿りながら、知っている史実や政治家が出てくるのが痛快。実際にアランと交流があったのではないかと思わせる。

100歳となったアランの現在も波乱万丈だ。老人ホームを抜け出した後、予期せず大金が入ったケースを手に入れた。犯罪組織に追われながら、途中で巡り合った人々と逃亡の旅に出る。予想外の展開と、早いテンポ。人々との心温まる交流と、偶然が偶然を呼ぶ展開で引き込まれる。

著者ヨナス・ヨナサンは、デビュー作の本書で世界的ベストセラー作家となった。人口900万人のスウェーデンで100万部売れたというから驚きだ。ヨナサンは新聞記者を経て、メディアコンサルティングやテレビ番組製作の会社を立ち上げ、成功した。その後すべてを手放し、本書を執筆した。

歴史に対する博識さにユーモアが絶妙にからまり、ベストセラーとなったのもうなずける。アランの生き様とともに、100年の歴史ダイジェストをおさらいでき、読み応えたっぷりだ。

11月8日からは、映画「100歳の華麗なる冒険」として日本で公開が始まった。ヨーロッパではすでに公開されており、好評を得ている。

◆西村書店の公式サイト「窓から逃げた100歳老人」
http://www.nishimurashoten.co.jp/pub/details/403_706.html

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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