「ソーシャル・インパクト・ボンド」の議論を【CSRフロンティア】

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原田 勝広(明治学院大学教授)

3月中旬、関西大学千里山キャンパスで日本NPO学会第16回年次大会が開かれ、参加した。学会発足当初の活況に比べると、参加者数やプログラムの内容に盛り上がりが欠けるのが気になった。NPOという存在自体が曲がり角に来ている影響なのだろう。

それでも、将来に向け注目すべき動きもあった。印象的だったのは、公開シンポジウム「新しい国のカタチと民間非営利組織の役割」のパネリスト、辻元清美議員(NPO議連幹事長)の発言だ。「先日、ニューヨークに行ってきました。ライカーズ島刑務所で出所後の再犯率をさげるために導入されたソーシャル・インパクト・ボンドの現場を視察するためです」と言ったのだ。かつての「社民党のエース」と「ボンド」の近接遭遇はいかにもミスマッチに見える。しかし、そうではない。これこそが新たな時代の息吹そのものなのである。

NPOの登場は1995 年に起きた阪神・淡路大震災でのボランティアの活躍と、それに続くNPO法の制定による。民間非営利組織や市民社会活動の重要性が広く認識された。「政府の失敗、市場の失敗。だからNPOが必要」という説明も説得力があった。しかし今、われわれは「NPOの失敗」を目のあたりにしている。

フィランソロピーの新たなフロンティア

NPOの今後を占う上で、ジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究所の小林立明氏がプレゼンで紹介した、ソロモン教授の「フィランソロピーの新たなフロンティア」は参考になろう。通常、フィランソロピーは「慈善」と訳される。だが、ソロモン教授は「社会的・環境的な目的を達成するための民間資源の動員」と再定義しているという。資金の供給側について、無償のグラントだけではなく経済的リターンを求める投資も認める一方、資金の需要側の「無償性」「非営利性」の枠を外したのが特徴だ。ビジネスを通して社会課題を解決する社会的企業やNPOの営利活動を意識したもので、背景にはNPO自体が資金調達において、募金・寄付以外の事業収入に力を入れていることがある。新たなフロンティアにおける資金調達は、ベンチャー・フィランソロピー、社会的投資、インパクト投資、ソーシャル・インパクト・ボンド、共同ファンディング、クラウド・ファンディングなど多様だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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