CSR とコーポレート・ガバナンス:続編【企業と社会の関係】

また、同社は1990 年代にコンプライアンス上の問題を起こしましたが、その後、行動規範を策定し、それを15 カ国語に翻訳して従業員間の共有を図っています。調達プロセスでの価値の共有にも努めていますが、サプライヤーコードを押し付けるのではなく、バリューチェーンを一緒に作っていくという姿勢を重視しています。

こうした取り組みを通して、同社の考え方が現地に根付いていく「土着化」が進められています。

本報告を受けて行われたパネルディスカッションでは、日本企業がアジア展開するにあたっての、現地法人に対するマネジメント・ガバナンスや、CSR レポートおよび情報開示のあり方などについて議論が行われました。

沖田氏からは、味の素では日本本社の取締役会と現地役員は、経営計画策定段階からコミュニケーションを密にしているが、現地で上場しているため、現地の規制などに沿って経営を行っていく必要があることが説明されました。また、本社がすべてを把握することはできないため、情報開示については各国単位でCSR レポートを出すことが望ましい、との考え方が示されました。また、これまでCSR 報告書では制度・理念を示すことに重きが置かれてきたため、今後それをどう実践するかということが問われている、との指摘に対して、CSR レポートに書かれていることと日々の業務がどうつながっているか社員が充分に理解していくことが必要、との考え方が示されました。

9月19日‐20日開催の国際ジョイント・カンファレンスでは、ヨーロッパやアジアからのスピーカーによるセッションなどにより、「CSR とコーポレート・ガバナンス」についてマルチセクターで議論を深めます。詳細は、http://j-fbs.jp/annualconf_2013.html を参照下さい。

【さいとう・のりこ】原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学専任講師。jfbs

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第8号(2013年5月7日発行)から転載しました)

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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