「消費」から「再生」する社会へ、求められる新たなリーダー像[上田 博康]

上田博康
三洋商事株式会社 代表取締役
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産業廃棄物のリサイクルを手掛ける三洋商事(東大阪市)は、「手サイクル」を掲げ、人の手で解体・分別することで、リサイクル率を高めている。「消費」から「再生」する社会に転換するために何が必要か。求められる新たなリーダー像について、上田博康社長に寄稿してもらった。

当社は1957年から、廃棄物を再資源化するリサイクル事業を手がけています。

「手サイクル」を行う従業員

「手サイクル」を行う従業員

さる10月28日に「エコ・ファースト環境メッセージEXPO2014」が開催されました。このイベントはエコ・ファースト企業に認定された21社が参加し、13文字で自社の環境活動をプレゼンするというエキスポです。

エコ・ファースト企業とは企業が環境大臣に対して、京都議定書の目標達成に向けた積極的な環境保全に関する取り組みを約束し、その認定を受けた企業を指します。当社は2008年に産業廃棄物処理業として、初めてエコ・ファースト企業の認定を得ました。

そのエキスポにおいて当社が発表したメッセージ「手サイクル 皆に優しい 未来くる」がグランプリの環境大臣賞に選ばれました。手作業で行うリサイクルを「手サイクル」と名付けた点や、その実績が評価された形となりました。

当社では機器類の分解をすべて手作業で行っています。人の手によって素材のひとつひとつを丁寧に解体・分別することで、再資源化し高リサイクルにつなげる作業方法です。機械によるレアメタルのリサイクル率は70%ですが、手作業でのリサイクル率は99%以上に上ります。

手間はかかりますが、資源の有効活用やゼロ・エミッション(廃棄物をゼロに近づける使命)に向けた方法としては、これ以上はない方法だと言えます。

さて今回は、そんなリサイクルやリユースに関して、私が思うところを書きたいと思います。

■ 消費社会からいかに抜け出すか

製造業でいうと現在、国内、海外メーカーを問わず、自動車産業がどんどん新興国に進出して販路を拡大していっています。中国へ進出、さらにインドへ進出と新しいマーケットをどんどん開拓しながら自社の車を普及させようと必死になっている。そういったニュースを目にするたびに「次はどこに売るのだろう?」と考えてしまいます。

地球の資源は、当たり前ですが有限です。資源を浪費すれば、環境への負荷もどんどん高まっていきます。

製造業の輸出が好調で、為替益で儲かりました。「それは良かった」と思いながらも、でも「必ずどこかで限界がくる」と思わざるを得ない。

私はなぜ世界のトップ企業には、あんなに優秀な経営者がいっぱいいるのに、先の見えた消費社会の競争から「いち抜けた」と言える経営者がいないのかが不思議でならないのです。

例えば、もうこの国には必要十分に車が行きわたっているから、「今後はパーツ供給だけでやります」と言いだす自動車会社がないのか。車はたとえ型遅れになっているとしても、充分に走るものは残し、パーツを交換しながら乗り続けることを啓発できないのか。

例えば「心臓部のエンジンには新しい技術を搭載したエンジンがありますので、それを載せ替えてもっと長く使いませんか」。

そんな提案をするような企業が、なぜ現れないのか。

この消費する社会は、本当に来るところまで来てしまっていると思います。誰かがリユースの考え方で地球規模に考えて、ただ消費を繰り返すことに反対の手をあげる経営者がいないとまずいところまで来ています。

■ 「最善か、無か」のポリシー

当社にも期末になると、型遅れになった新品の家電製品がどんどん入ってきます。売り時を失ったので、廃棄されてくるのです。私たちはそんな消費する社会の、負の側面が見えやすいのかもしれません。

だからこそ、当社で購入する作業機械というのは必ず「ずっと使えるものにしたい」と考えています。パーツを交換しながら、いつまでも使える機械が良い。ある自動車メーカーの企業ポリシーに「最善か、無か」というのがあります。

昔の話ですが、そのポリシーを反映していると、最も印象的だったエピソードがあります。そのメーカーの車の運転席側のミラーが手動だったことでした。手動なら壊れないし、微妙なミラー調整もできる。手の届く範囲の機器が電動である必要はない、という思想。それは本当に最善の方法だと感心しました。

消費する社会で言えば、エネルギー問題も同じです。北極の岩盤を掘ったら新たな鉱脈が見つかりました、というようなニュースを耳にするたびに思います。

「また限りある資源に手をつけて消費するのか」と。そして結果的に環境を悪化させる。そんなことをいったい「いつまで続けるのかな」と心底思うのです。

食糧問題はどうでしょう。毎日大量の食糧がゴミとして出されています。個人的な意見ですが、私はわざわざ鮪を養殖してまで食べなくても良いと思っています。漁獲規制を厳しくして、高価な食材として食べれば良い。鯛は昔、非常に高級な食材でした。

「獲れないから食べられない」ならそれで良いと思うのです。

美味しいものを安く食卓に提供するのが商売だとは思いますが、同時に希少な食材を食べられたときの喜びは失われてしまっている。その時期、その土地でしか食べられない本当に美味しい食材があるから豊かなのであって、自然体系を壊してまで大量に収奪する必要はないと思います。

リサイクルやリユースは不自由ではありません。逆に本物の持つ良さを際立たせてくれて、良いモノを長く使い続ける喜びを教えてくれます。消費をおさえて、環境への負荷もかけない。そんな考え方が、地球に生きる人間としての自然に対する感謝や、本当の豊かさを与えてくれるのではないかと思います。経営者は特に、そんな自覚が求められる時代になってきたのではないでしょうか。

上田博康
三洋商事株式会社 代表取締役
近畿大学を卒業後、1993年4月に三洋商事株式会社へ入社。1999年1月から現職を務める。三洋商事は東大阪市に本社を置く、廃棄物処理および再資源化を行う企業。各業界の環境トップランナーとして活動する企業を環境大臣が認定する「エコ・ファースト企業」として、エコ・ファースト推進協議会にも加盟する。

2015年1月8日(木)12:52

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