三つのつながりの中で生きる――地球、生き物そして将来世代[原田 憲一]

原田憲一
NPOシンクタンク京都自然史研究所、特別研究員
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原田憲一2

私たちが生きていく中で、他者とのつながりは必須であるが、具体的に意識することは少ない。しかし、これを見失えば個人は孤立しかねない。地球、生き物、そして将来の世代という三つの大切なつながりを、地質学・資源人類学を専門とする原田憲一氏は提示する。このつながりに関する地球科学からの解説を寄稿いただいた。(至誠館大学学長代行=原田憲一)

現代の日本人の大多数は病院で生まれて病院で死に、斎場に運ばれて火葬されます。私たちは生まれ育つときは無論のこと、死後も他人の世話にならねばならないことは明らかです。それにもかかわらず、日本のバブル経済崩壊後、政財界の要人たちが「自由競争」と「自己責任」を強調してきました。

その趨勢(すうせい)に煽られて他者とのつながりを見失った若者は、自由と身勝手を履き違えて犯罪に走ったり、自立と孤独の区別がつかずに自殺に追い込まれたりしています。自立と孤立はよく似た状況に見えますが、社会的にはまったく異なる生き方です。孤立してしまった若者にとって社会は閉塞した無機質な器でしかないのです。孤独と疎外から脱却するには、未熟な自意識から自己を解放する必要があります。その手助けとして、私たちは三つのつながりの中で生きていることを、地球科学の観点から説明します。

1.地球とのつながり
私たちは「宇宙船地球号」の乗組員だと言われているにもかかわらず、地球との結びつきを実感することは滅多にありません。空と海を除けば、地球は巨大な岩石の塊としか意識できないからです。ところが、視点を硬い岩石から畑や水田の「土」(土壌)に移せば、私たちと地球との深いつながりが理解できます。

生態系と聞くと、私たちは光合成で育つ植物を動物が食べ、動物の遺骸を微生物が分解する、という食物連鎖の図式を思い浮かべます。しかし、植物は太陽光と水と二酸化炭素だけで育つわけではありません。

たとえば、窒素、リン、カリウムは植物の三大栄養素です。他にもマグネシウムは光合成を行う葉緑素に、カルシウムは葉っぱを支える硬い枝や幹に必須です。

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原田憲一
NPOシンクタンク京都自然史研究所、特別研究員
1946年生まれ。1977年京都大学大学院博士課程修了(理学博士)。独アレキサンダー・フォン・フンボルト財団奨学研究員(キール大学)、米ワシントン州立大学客員講師を経て、1980年山形大学理学部地球科学科助教授、1995年同地球環境学科教授、2002年京都造形芸術大学教授、2012年定年退職後NPOシンクタンク京都自然史研究所研究員。専門は地質学、資源人類学、災害文化論、比較文明論。主な著書『地球について』『地学は何ができるか』『地球時代の文明学』『平安京のコスモロジー』『日本の聖地文化』『収奪文明から還流文明へ』など

2015年1月22日(木)16:55

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