過去の大震災から学ぶ、「マンション防災」のあるべき姿[荒 昌史]

■ 防災減災対策を行い、復興への近道を

阪神・淡路大震災以降も、大きな震災がたくさんありました。震災以外でも、豪雪や集中豪雨、火山の噴火、台風など多くの自然災害が起こっています。さらに、首都直下地震・南海トラフ沖地震が起こることが確実視されています。

「中央防災会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が2013年12月にまとめた報告書によると、マグニチュード7クラスの都区部直下の地震について検証した首都直下地震の被害想定は、「揺れによる全壊家屋:約 175000 棟」、「建物倒壊による死者:最大 約 11000 人」とされています。

さらに地震が昼間に発生した場合は鉄道の運行停止に伴い、膨大な数の帰宅困難者が発生。避難所には近隣の住民のみならず、事業所の従業員や買い物客、帰宅困難者など多様な避難者が押し寄せて収容能力を超える避難所が出るとされています。

災害からの復興には長い年月がかかります。費用もたくさんかかります。そうそう簡単に成し遂げられるものではないことを、私たちはよく心に留めておく必要があります。

復興を成し遂げる年月や費用を最小限にするために、災害の被害を減らすこと、そのための準備・対策が「防災減災」と言えます。

そして、何よりも自分が生き延び、大切な人を守ること。その対策を講じるべきでしょう。

昨年末に開催されたマンション防災に関する講演会の様子
昨年末に開催されたマンション防災に関する講演会の様子

■ 全国で「よき避難者」を育成するワークショップを開催

なかでも私たちが着目しているのが、マンションなど集合住宅を中心とした防災減災対策です。都市部では多くの人々が集合住宅で暮らしているからです。

また、自助(自分のことは自分で守る)・共助(地域住民で助け合う)・公助(公的機関に助けてもらう)という防災減災の3原則のうち、特に大震災のときの鍵だとされる「共助」を、地域のつながりが疎遠な都市部のマンション及びその周辺地域にて行えるのかどうか。

災害が大きくなればなるほど、公助が行き渡るための時間がかかります。その間、自助と共助で生き延びなければなりません。

「兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書(日本火災学会)」によると、阪神・淡路大震災の際に、生き埋めや閉じ込められた際の救助は、自力や近所の方、通行人などの自助・共助が97.5%、公助は2.5%だったそうです。

また、都市部は、ただでさえ不足している避難所の規模に対して、周辺に暮らしている人数が多すぎます。すると、指定避難所ではない場所で自主避難をする方も大勢出てきます。比較的、倒壊の恐れが少ないマンションは、特に自主避難所となる可能性が高いでしょう。そのとき、マンションがセーフティネットになれるかどうか。

そのためには、住民一人ひとりが「受け身で支援を待つのではなく、変化する状況のもとで主体的に適切な行動をとることができる避難者」=「よき避難者」となることが大切です。

キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..