行政のLGBT支援から、法整備へ向けて[村木 真紀]

何かするときに、女性や障がい者などに配慮するのと同様に、LGBTにもちょっとだけ気を回してくれる。それが本当に素晴らしい。これはLGBT支援宣言をきっかけに、住民の中にLGBTがいることが職員さんから「見える」ようになったためであると思う。行政から支援のメッセージを出すことで、困難を抱える当事者の声を拾えるようになったのだ。

しかし当然、基礎自治体だけではすべてを解決できない。法律がからむ問題が残る。この残った課題の数が、そのまま法制化へのニーズである。

内閣府の「人権擁護に関する世論調査」でも、LGBTの権利については「(どのような問題があるか)分からない」という回答が多い。この状況で、いきなり同性結婚法制化といっても納得感がないかもしれないが、行政が地域の当事者と一緒にあれこれ工夫をした後で、なお困っている人がいるというのなら、納得し、共感、賛同してくれる人も多いのではなかろうか?

渋谷区の条例は、法的効力はないという。それは淀川区LGBT支援事業も同じだ。しかし、これをきっかけに、医療や警察、子育てや不動産賃貸などの現場で、同性パートナーを持つLGBTが「見える化」される。渋谷区では同性パートナーが切り口になるので、淀川区とはまた違った問題が抽出されるはずだ。私はそれに大いに期待したい。

英国発エシカルコスメのラッシュ店頭にて。LGBT支援に取り組む自治体に対し応援メッセージを集めるキャンペーンを行っている
英国発エシカルコスメのラッシュ店頭にて。LGBT支援に取り組む自治体に対し応援メッセージを集めるキャンペーンを行っている

行政のLGBT支援施策が、地域の当事者の課題の可視化につながり、その課題への取り組みを通じて法制化(結婚に関する権利だけでなく、職場や学校での差別禁止なども含む)を求める声が高まる。長い道のりにはなるかもしれないが、私は法制化までの有力なルートのひとつではないかと思っている。

ちょうど現在、2月14日までであるが、自然派化粧品ブランドのLUSH(ラッシュ)が、LGBT施策を行う自治体に応援のメッセージを届ける署名キャンペーンを展開している。

この署名の提出先にはもちろん淀川区も入っている。地域での取り組みを後押しするために、是非ご協力をお願いしたい。

◆日本国内で広がる行政によるLGBT支援の取り組みを応援します!
http://goo.gl/uLcJ5a

muraki

村木 真紀 (認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事)

認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)執筆記事一覧

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