紛争鉱物規制をめぐる現状【企業と社会の関係】

例えば、アメリカの電子業界行動規範(EICC)とヨーロッパのグローバル・e サステナビリティ・イニシアティブ(GeSI)は、「紛争フリー精錬所(CFS)プログラム」として、紛争鉱物ではない鉱物資源の精錬/精製を行っていると評価された精錬所/精製所のリストを、タンタル・スズ・タングステン・金それぞれにつき作成・公開しています。

また各企業が、自らのサプライチェーンにおいて特に紛争鉱物に関する情報を追跡し、デューデリジェンス・プロセスに役立てることができるよう「紛争鉱物報告テンプレート・ツール」を開発・公開し、情報開示・伝達を促進しています。

OECD は、マルチステークホルダー・ガイダンス「紛争およびハイリスク地域産鉱物の責任あるサプライチェーンのためのOECD デューデリジェンス・ガイダンス」を策定し、強力な企業マネジメントシステムの構築、サプライチェーンにおけるリスクの特定と評価、サプライチェーン・デューデリジェンスに関する年次報告などのステップを踏むことを推奨しています。

■ MSP による取り組みが抱える課題
ただしこのような取り組みにもかかわらず、武装勢力は様々な資金源をもっておりタンタルなど一部の金属を介した市場からの働きかけでは紛争解決には至らないこと、そのほとんどが貧困層である小規模採鉱職人を排斥することに繋がること、などの限界もあることが髙氏から指摘されました。

MSPと言いつつもコンゴのローカルアクターの声はほとんど入っていないこと、MSPを採用するのは基準策定時にとどまっていることを踏まえ、誰をマルチ・ステークホルダーとするのか、どのようなマネジメントを行っていくのか、民主的なMSPとはどうあるべきか、については、検討すべき重要な課題であることが指摘されました。

次回は、「ソーシャルコンシューマーの消費意思決定プロセスの解明」に関する研究報告の内容を紹介致します。

【さいとう・のりこ】原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学専任講師。jfbs

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第9号(2013年6月5日発行)から転載しました)

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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