社内を活性化するCSV マネジメント【世界を変えるCSV 戦略】

例えば、「温室効果ガス」に関する「消費者の洗顔・洗髪などの際に排出される温室効果ガスを削減するための製品とツールを、2015 年までに2 億人、2020 年までに4 億人に届ける」という目標に対しては、「温水による洗髪の回数を減らすためのドライ・シャンプーの開発などで消費者の習慣を変えようとしているが、実現は容易でない」として、「Off-Plan」と評価しています。

しかし、消費者調査を通じてドライ・シャンプーの購入者は60%の洗髪をお湯なしで行っていることを理解しており、ソーシャル・メディアなどを通じた消費者の習慣を変えるアイデア収集なども実施し、目標を何とか実現しようとしています。

このように、ユニリーバは、2020 年に向けたビジョンおよびそれに向けた中期目標を具体的に示した上で、PDCAマネジメントを通じて真摯に実践しようとしています。

■ 社員の「志」を解放するマネジメント

一方、ソフト・マネジメントとは、CSV やCSR の考え方やアプローチを組織に浸透させ、個々人が自発的にCSVやCSR 活動を推進するよう促すやり方です。

CSV やCSR を組織に浸透させるためには、① トップが社員に対し、重要性を語り続けること、②様々な広報・プロモーションツールを用いて知識を広めること、③ワークショップなど社員との双方向の対話を通じてCSVやCSR の意味合いについて理解を深め納得性を高めること、④表彰制度や人事評価などのインセンティブを与えること、などが基本アプローチです。

CSV については、実践している個人の事例を素晴らしいストーリーとして、社内で共有することなども有効でしょう。

このように組織としての意識醸成、組織がサポートしてくれるという雰囲気があれば、「志」を持った社員が積極的にCSV を推進し始めるのではないかと思います。CSV は、埋もれていた社員の「志」を解放し、社員のモチベーション、ロイヤルティを高め、組織を活性化するためにも有効な活動です。

ハードとソフトのマネジメントをうまく組み合せ、組織も社員も生き生きとして、企業と社会の両方に価値を生み出していく企業が1 社でも増えることを期待します。

【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/サステナビリティのコンサルティングを主業務とする。

(この記事は株式会社オルタナが2013年6月5日に発行した「CSRmonthly」第9号から転載しました)

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..