機関投資家向け企業報告の新たなる地平[中畑 陽一]

国連が主導してESG投資を進めるPRI(責任投資原則)の署名機関数は45兆ドルの資産を代表する1300機関以上(http://www.unpri.org/about-pri/about-pri/)にのぼっています。PRIはファンドマネージャーがESG投資をするための手引(http://goo.gl/f8JyOY)を発行するなどして投資家サイドの啓発を行い、その中でも「アニュアルレビューなどによる情報収集」を促しています。

日本においても、JSIFの年金基金に関する調査(http://www.jsif.jp.net/#!pension-esg/cqjm)によると、8割の年金基金が「今後ESG情報は企業にとって重要」と答え、65%が既にそれらは企業の株価に影響を与えているとあり、出遅れていた日本における長期資金もESGを重視する方向にあります。

さらにはそういった投資家に情報を提供する情報ベンダーや情報提供機関も充実してきています。Bloomberg(https://www.env.go.jp/council/02policy/y0211-04/ref05.pdf)、Thomson Reuter(http://goo.gl/jFC8Qi)、MSCI(http://www.msci.com/products/esg/about_msci_esg_research.html)など大手情報ベンダーによるESG情報データ提供や、CDP(https://www.cdp.net/en-US/Pages/HomePage.aspx)による温室効果ガス、水資源、森林資源についての環境負荷情報収集と提供、FTSE 4 GOODやDJSIなどのサステナビリティインデックスの定着など、世界の投資市場はESG情報を取り込むのが当たり前になっていくものと思われます。

■ もはや読み手は投資家だけではない

ステークホルダー経営はもはやCSR分野の話ではなく、企業経営自体にも深く関係します。三谷宏治氏の『ビジネスモデル全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)における戦略的フレームワークの特徴においても、これからのビジネスモデルはステークホルダー全体を巻き込んで考えていかなくてはならないことが示されています。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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