機関投資家向け企業報告の新たなる地平[中畑 陽一]

企業と社会の価値創造を両立させることを説いたマイケル・ポーターのCSV(共有価値の創造)も耳にすることが多くなってきましたが、社会的価値創造とビジネスの対象がお客様からステークホルダーに広がるように、ARの対象も投資家からステークホルダーに拡張され、そのコミュニケーションから価値創造が生まれていく。ARはその最重要ツールに位置づけられるべきではないでしょうか。

そうしたツールであれば、例えば従業員が自社のビジョンや戦略、リスクと機会、財務の状況を総合的に把握する材料となり、顧客や社会に対して貴社の価値創造を伝えるブランディングツールとなり、公共機関やNGOとのオープンな対話のためのツールとして機能するものと成り得ると考えられます。(勿論、具体的なターゲットと用途はそれぞれ異なり、編集していく必要があります)

このようにARは市場の変革、社会の要請、ビジネスモデルの変容といった環境の激変のなかで、ステークホルダーと共にある企業として、ますます重要な情報開示・コミュニケーションツールへの進化していくものと考えられます。機関投資家向けの情報開示が必要とされる企業は、今こそARの在り方を見直す機会ではないでしょうか。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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