社会貢献活動の棚卸し【世界を変えるCSV 戦略】

こうした評価により社会貢献活動のポートフォリオを描き、「自社にとっての価値」が高く、費用に見合っていると考えられる活動は継続することで良いのですが、そうでないものは対応を検討すべきです。「自社にとっての価値」も「社会にとっての価値」も低い活動は、見直しの対象となります。ステークホルダーとの対話を経て、社会からも活動の継続が期待されていないようであれば、活動を休止することで問題ないでしょう。これでかなりのコスト削減が可能なはずです。

「自社にとっての価値」は低いが、「社会にとっての価値」が高い活動については、活動を継続する意味合いはありますが、自社でなくとも良いということです。こうした活動については、他社とのコラボレーションを検討すべきです。

もし他社事業の強化に役立つような活動であれば、他社に活動を譲渡することも考えられるでしょう。または、他社や政府などと協働で活動を実施することにより、自社の負担を減らすことなども考えられるでしょう。社会にとって価値のある社会貢献活動は、それを実施するにふさわしい企業が実施するほうが、社会にとっても、企業にとっても価値を生み出します。

世界的に企業の社会貢献活動を戦略的に実施しようという動きが進んでいます。英国をベースとして社会貢献活動の定量評価を検討しているLBGの調査によれば、社会貢献活動に占める戦略的投資の割合は、2007年の38%から2012年には57%に増加しています。

企業の社会貢献活動は、企業にとっての投資であると同時に社会にとっての投資でもあります。より「戦略的」に社会貢献活動を行うことは、自社のためでもあるし、社会のためでもあります。社会貢献活動は、社会価値と企業価値の両面でパフォーマンスを評価し、見直していく必要があります。

【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/ サステナビリティのコンサルティングを主業務とする。ブログ「CSV/ シェアード・バリュー経営論」共著『CSV 経営』(NTT 出版)

(この記事は、株式会社オルタナが2014年3月5日に発行した「CSRmonthly 第18号」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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