トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー、ノボノルディスク――下田屋毅の欧州CSR最前線(44)

スザンヌ・ストーマー副社長は、「コミットメントし、言動と行動の一貫性を示すことが、全指導者の最も重要な役割である。」「TBLとサステナビリティが、『追加で行うこと』『できたら良いこと』として見られることが最大の障害となる。我々のビジネスにとって『しなければならないこと』として提示し、ビジネスの一環として取り組む。」と話す。

統合報告書の導入
年次報告において、ノボノルディスクは早くから統合報告書に取り組んできた。1994年に最初の環境報告書を発行、NGOの求めに応じて、環境フットプリントを発表した。1995年には、環境報告書に生命倫理を追加、1998年には、社会的報告書を発行、1999年に環境と社会的報告書を発行、2001年には、TBLをベースにした報告書を発行、そして、2004年に統合報告書へと移行した。

統合報告書とは、年次報告書(財務情報)とCSR報告書(非財務情報)が掲載された報告書のことだが、合冊を意味するものではなく、長期的経営戦略に環境・社会的要素の関連づけがなされ、企業活動を行うプロセスの中で環境・社会的価値を生み出すものであり、主に投資家を対象としている。

ストーマー副社長は、統合報告書をこう例える。「私は、我々のビジネスが焦点を当てている糖尿病と統合報告書を時折比較する。それは、慢性で、進行性で不可逆である。いったん、あなたが統合報告の作業始めると、あなたが実施する全てが変化することを意味する。そして改善するために常に進歩することが必要となり、引き返すことができない。従って、統合報告に挑戦するための大きな一歩であり、慎重に影響を考慮しなければならない。」

またストーマー副社長は、「統合報告には、統合思考が必要となる。統合報告を始め、その後徐々にビジネスのプロセスにサステナビリティの思考を組み込んでいくこともできる。基準が存在していないか長期間に渡り標準規格が存在していない実験を行っていく必要がある。経営トップのサポートとプロセスを駆動するためのチームが不可欠。」と話す。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..