社会人は組織人なのか、個人か?[三輪 昭子]

友人は大学の学部をすでに卒業し、いわゆる社会人でした。社会人特別入試枠に挑戦すべく準備を始めたそうです。大学院試験には、一般入試と社会人入試という制度があります。現在481の大学院が社会人入試を実施しています(2013年1月現在、ナレッジステーションの調査による)。「社会人特別選抜制度」の入試科目は、大学院や専攻によってさまざまです。小論文、英語、書類審査、口述試問など、専門の知識の他に英語能力を求められることが多く、中には口述試験と書類審査という大学院もあります。

友人のエピソードは入試の在り方ではなく、社会人の位置づけを問うようなものでした。出願時に必要な書類で発覚したのは、組織に属している人が原則であるかのような書式の提出形式です。在職証明書か、所属長による入学承諾書が提出できた際に、社会人特別入試枠での受験を許可するものであったそうです。

友人はフリーランスでした。彼女は、「組織に属して仕事をする形態でないと社会人としての受験枠が得られないのは変だ」と当時は何度か担当部署に掛け合いました。それでも、お役所仕事的な判断しかしてくれなかったようです。少なくとも、そういう印象を受けたそうです。結局、在職証明書の提出がないので、社会人特別枠ではなく一般入試枠での受験となりました。

近年、多くの大学・大学院が社会人特別入試制度を設けており、いわゆる学部生から直接の進学ではなく、社会人を対象とするなど多様な入試枠を設けて学生募集をしています。大学によっては社会人についての考え方を提示し、進学を勧めるような工夫をしています。

筆者は、大学院入試制度の在り方ではなく、「社会人」という用語のもつイメージ、位置づけに問題があると考えるのです。友人の事例から想起されるのは、組織の存在です。社会人=組織人であるという暗黙の決めつけなのです。

また、筆者はネットアンケートに参加することがあります。その属性を分類するような問いに、例えば職業的分類を図る質問の選択肢に呆れることがあります。その選択肢は、職業を問うているはずなのに、正社員、派遣社員、契約社員、パートタイム、アルバイト、学生、無職となっているのです。これらの選択肢は働きかた、あるいは雇われ方であって職業ではないのです。そこには所属のあることが暗黙の了解となっています。

最近、面白い資料に出会いました。「『働く目的・モチベーション』に関するアンケート調査」です(株式会社オウチーノによるインターネット調査、2013年10月11日~15日)。人は生きている間、可能な範囲で働くものだという考え方を筆者はもっています。もちろん、働くことには遊びも、学びも、金銭を得てのもの、家事のように金銭を伴わないとされることも、含んでいます。

調査は働く20~50代が対象。結果は、「働く目的」の第1位は、全年代において「生活・家族のため」となりました。「仕事が好き、面白いから」「社会、人の役に立ちたいから」と回答する人は、年代が上がるごとに増加。「自由に使えるお金が欲しいから」「貯蓄するため」と回答する人は、20代・30代が40・50代を大きく上回ったようです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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